【アフリカジャーナリスト・大津司郎さん】アフリカに学ぶ多様性社会との向き合い方
異なる社会に目を向けて
――アフリカから私たちが学べる点は?

2024年、コンゴ民主共和国東部の都市にて現地の友人と(大津氏提供)
日本は長い間、文化や価値観に共通点の多い社会として成熟してきました。そのため、異なる文化や考え方と接する機会が諸外国に比べて限られていたと言えます。島国という地政学的な背景も要因の一つでしょう。一方、アフリカでは多様な民族が共に暮らし、対立しながらも、互いを理解し、尊重する力を育んできました。
最近、日本でも「ジャパンファースト」という言葉を耳にするようになりました。自国を思う気持ちはもちろん大切です。しかし、それならばなおさら、世界を知ることが求められます。例えば、欧米諸国では長年にわたり移民を受け入れてきた歴史があります。国連によると、現在アメリカでは約5千万人、ドイツやイギリスは1千万人以上の移民を擁しており、その中で、「異なる背景を持つ人々とどう関わるべきか」を模索しています。
どの国も、移民の受け入れを巡って、感情的な葛藤や政治・経済的な問題に直面してきました。日本も今、その葛藤と向き合う段階に差し掛かっているのではないでしょうか。僕は、そのための大きなヒントがアフリカにあると考えています。
アフリカの貧困や紛争は、単なる地域の問題ではなく、先進国の資源需要とも深く結びついたグローバルな課題です。私たちはアフリカを支援の対象として捉えるあまり、どこか上から目線になってはいないでしょうか。しかし、アフリカには他者への敬意や多様性を当たり前のものとして受け入れる感性があります。大切なのはそのアフリカに学ぶという視点です。
多様な価値観に触れる機会が限られている日本だからこそ、アフリカという異なる社会のあり方に触れることが、真に多様性を尊重する社会への第一歩になるはずです。
プロフィル
おおつ・しろう 1948年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。東京農業大学在学中にアフリカを訪れ、その後、タンザニア、チャド、ナイジェリアなど、アフリカ諸国を巡り、紛争や人道問題を取材している。現在、ニュースやバラエティーといったテレビ番組(クローズアップ現代・世界の果てまでイッテQ!・情熱大陸など)のコーディネーターも務める。





