【認定NPO法人 難民を助ける会理事長・堀江良彰さん】侵攻から1年――世界に目を向け、興味・関心を持ち続けて

同じ地域に住む仲間として声をかけてほしい

――日本人である私たちにできる支援はどんなことがありますか

難民のサポートをしている団体への寄付といった支援が良いのではないでしょうか。「現地に物を送りたい」という声をよく耳にしますが、日本から物資を送るのは、輸送費や税金がかかってしまうため、なかなか難しいものがあります。寄付であれば、ウクライナの近隣諸国で支援物資を購入する際に、皆さまからの献金を充てることができます。それにより、日本から送るよりも多くのものをスピーディーに避難者に届けることができます。

寄付につながる活動としては、募金はもちろん、チャリティーグッズの購入やイベントへの参加などいろいろあります。AAR Japanのウェブサイトでお知らせしているので、ぜひ、見て頂ければと思います。こうしたインタビューや活動の記事を見聞きして、SNSで発信して頂けるのも支援につながります。

現在、愛媛県以外の全ての都道府県(2月15日現在)に避難民の方がいらっしゃいます。皆さんの住む地域にも避難してきていますので、ぜひ、声をかけてください。日本人は知らない人に気軽に声をかける習慣がありませんが、同じ地域の仲間として受け入れ、接してください。身構えずに、心を開いて、声をかけるといいと思います。

――読者にメッセージをお願いします

侵攻から1年が経ち、報道は減ってきましたが、この争いを忘れず、ウクライナへの興味、関心を持ち続けてください。皆さんが無関心になると、残酷な未来が待っているかもしれないからです。

過去に、世界が目を向けなかったがために、悲惨な歴史をたどった国が数多くあります。例えばカンボジアのポル・ポト政権下では、閉鎖された空間で大量虐殺が行われており、政権崩壊後に露呈しました。アフガニスタンでも、軍事介入をしていた旧ソビエト連邦が撤退した後、国際社会の関心がなくなると、いつの間にかタリバン政権が台頭し、恐怖政治が執行されていました。人権抑圧や残虐行為が横行していても、誰も気づかない、通報もされないという事態になります。

今回のロシアとウクライナの問題は昨年に始まった話ではありません。2014年にロシアがクリミア半島を強制併合した際に、国際法的にはおかしな話ですが、そこに関心を向ける人はあまりいませんでした。昨年のロシアの侵攻の理由も正当なものではありませんが、それまでの無関心が今回の侵攻につながったと分析している学者もいます。気づいたら取り返しのつかないことに陥っている可能性があるのです。

先ほど、日本にいる避難民に声をかけるという話をしましたが、やはり、お互いが他人ではなく、同じ地球上に住む人間なのだという視点が大切です。だからこそ、今、起こっていることを見続けなくてはいけない。現実に日本にも、輸入品の不足や物価高騰と影響が出ているのですから、変化を肌で感じているはずです。ニュースやSNSの情報を追うのもいいですし、寄付や何かアクションを起こすのでもいいです。日本は日本だけで回っているのではなく、世界とつながっています。

支援の方法はウェブサイトから https://aarjapan.gr.jp/support/

プロフィル

ほりえ・よしてる 民間の物流企業を経て、2000年1月よりAAR Japanへ。チェチェン難民支援、アフガニスタン支援事業等に従事する。その後、事務局長、常任理事、専務理事を経て、21年6月より現職。