【子どもの貧困対策センター 公益財団法人あすのば代表理事・小河光治さん】「相対的貧困」に苦しむ子供たち 「共助」「公助」の両輪で育てる社会に

「あなたのことが大切だ」と心からのメッセージ伝えたい

――今年4月には、「こども家庭庁」が設置されます

こども家庭庁は、子供を社会の中心に据えることを目指す行政機関です。この理念は「あすのば」と同じですので、私たちもさらに連携して支援政策につなげていきたいと考えています。

また同月には、子供の支援に携わる人々の悲願であった、子供の権利を擁護する「こども基本法」が施行されます。子供の権利が守られているかを調査、勧告する第三者機関の設置が見送られるなど課題はありますが、「社会全体で子供を育てる」ための方針転換を図る重要な機会といえます。

現在、日本では教育費の公費負担が先進国の中でも低いため、大学進学までに莫大(ばくだい)な金額がかかります。これを欧米諸国と同じ水準まで増額できれば、高等教育を受け、いずれ日本を支える若者がたくさん出てくるはずです。

そして、非正規雇用の見直し、シングルマザーが正社員として働ける労働環境を作るなどにも取り組む必要があるでしょう。少子高齢化が進む日本で、子供の支援は未来への投資といえます。全ての子供が安心して過ごせる場、必要な高等教育を与えられる社会をつくることが大事です。

――地域社会の役割も大きいですね

子供の貧困を研究する立教大学の湯澤直美教授は、「重要な他者との出会い」の有無が若者の犯罪に深く関わっていると述べています。これは子供の自死問題にもつながりますが、本当につらい時、「あなたのことが大切だ」と思いやってくれる人の顔が浮かべば、最悪の選択を回避できる可能性が高いというのです。

こうした関係性は地域の中で育まれます。ご近所付き合いや地域行事への参加など、長期的な触れ合いを通した信頼の構築は、子供たちの安心感となり、生きる希望にもつながっていくはずです。

子供が抱える問題は複雑であり、その全てを解決することは容易ではありません。公的な支援と併せ、目の前の子供一人ひとりを大切に思い、触れ合うことが、社会の中で子供が生き生きと育つための鍵だと言えます。

プロフィル

おがわ・こうじ 1965年、愛知県生まれ。大学卒業後、あしなが育英会に勤務。退職後、2015年に子どもの貧困対策センター「一般財団法人あすのば」を設立し、代表理事に就任。16年に「公益財団法人あすのば」に移行。17年から内閣府「休眠預金等活用審議会」専門委員主査、19年から社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会理事、22年から公益財団法人こども財団理事を務める。