WCRP/RfP国際共同議長 庭野光祥次代会長に聞く 第10回世界大会を終えて
「自分事」で変わる世界 新事務総長の活躍に期待
――印象に残った、もう一つはどのようなことでしょうか?
新しい国際委員会の事務総長に、エジプト出身のアッザ・カラム博士が就任したことです。初めてイスラームの、そして女性の事務総長が誕生したことは、多様性のある組織を象徴するもので、意義のあることだと思います。
カラム博士は、かつてWCRP/RfP国際委員会で仕事をされた後、国連の要職にも就かれた方です。
私は最終選考にも携わらせて頂きましたが、そこでの、選考委員とカラム博士との質疑応答が印象的でした。事務総長に就任すれば、国連での恵まれたポストから去らなければなりません。それについて問われた彼女が、「あなた方は、WCRP/RfPにはそれだけの価値があることを分かっていないのですか」と逆に選考委員に質問したのです。こうしたことからも、世界のWCRP/RfPになったことを肌で感じました。
世界は、男性がつくった枠組みの中に女性が入れてもらって活動する時代から、男性と女性がそれぞれ絡み合いながら、特長や強みを生かした融合の時代へと移っています。新事務総長を迎え、WCRP/RfPは、これまでのよさを引き継ぎながら、さらに多様性のある新たな発展を遂げていくと期待しています。
――現在、宗教者が求められている役割とは何だとお考えですか?
世界はこれまで、国民国家を基にルールをつくり、国際的な仕組みを築いてきましたが、そうした基盤だけで物事を考え、対処することがだんだん難しくなっています。例えば経済はグローバル化して人・物・資本が自由に行き交い、国の境があいまいになっています。戦争とは国同士の戦いでしたが、現在は、グローバルに展開する過激派や武装組織によるテロが各地で起きています。そうした中で、国家だけでは解決できない課題に対し、国家という基盤とは異なる「宗教」がクローズアップされています。その中でも、対話・協力を推進してきた諸宗教者のネットワークであるWCRP/RfPという組織がとても重要な意味を持ってきているのです。
国家間の関係だけでは対応が難しい課題に対し、諸宗教者が独自のネットワークを生かして取り組んでいく。あるいは宗教者と各国政府とが協働していく。さらに、政府と宗教者、NGO、各分野の専門家がパートナーとなっていく。世界の現状に対して、そうした取り組みの必要性を強く感じます。ドイツ政府が今大会を支援してくださったことの意義も、そこにあると思います。