【シングルズキッズ株式会社代表取締役・山中真奈さん】人との温かいつながりの中で子供たちの心を育む社会を

子供に笑顔で触れ合う機会を

――シェアハウスの取り組みを教えてください

特徴が二つあります。一つは、私と保育士経験のあるシニアの女性が一緒に住み込み、近所の方からもサポートを頂きながら、平日の夕食の提供と保育園のお迎え(別料金)、夜9時までの見守りを行っていることです。

これにより、子供たちは、一人やきょうだいだけで過ごす不安な時間や孤食がなくなり、安心して毎日を過ごせます。一方、お母さんたちは、家事の負担が軽減され、心にゆとりを持って子供と触れ合えるようになります。仕事の悩みや育児の相談を同居する他のママたちに聞いてもらうことで、心の安定につながっています。

子供にとって、一番心が安らぐのはママの笑顔。たとえ長い時間でなくても、ママが、自分のその日の出来事をニコニコしながら聞いてくれ、寝る前に優しい声で本を読んでくれるなど、子供の気持ちが安らぐひとときがあれば、愛情がしっかりと伝わります。こうした触れ合いがとても重要なのです。

シェアハウスの皆が集うリビング。思いを寄せ合い共に時を過ごす中で、子供の心が育まれていく

二つ目は、入居者のプライバシーを最大限に配慮した上で、地域に開放している点です。昔の子供は大家族の中で育ち、隣近所の方が面倒を見てくれたり、危険なことをした時には叱ってくれたりと、地域で育つ環境がありました。しかし、今はほとんどが核家族で、地域や人とのつながりも希薄ですから、ひとり親家庭のお母さんは家事や育児だけで精いっぱいで、孤立しがちです。

そこで、多くの温かいつながりの中で子供たちが伸び伸びと成長していけるようにと思い、1階の食堂で地域の方々を招いて一緒に食事ができるようにしました。一室をレンタルスペースにし、近隣の方の会合にも使ってもらっています。ここでいろんな大人と出会い、「こんな人になりたい」「こんな仕事をしたい」と子供たちが将来を前向きに考える機会になればと願っています。

子供たちは社会の宝。“緩い親戚関係”をたくさんつくりながら、みんなで子供たちの心を育んでいきたいですね。

――シングルズキッズの取り組みで感じる子供たちの変化は

子供たちのことを以前から知っている方からよく、「笑顔が増えた」と言われます。ここに引っ越してこられる家族はそれぞれに難しい事情を抱えていますから、初めは表情が硬く、気持ちを抑えている子供もいます。ここで同じ境遇の人たちと暮らし、一緒に夕食を食べ、時にけんかをしながらも、みんなで楽しく遊ぶことを通して、子供たちはだんだんと本来の自分を取り戻していくようです。

例えば、みんなで映画を見ている時に笑って大騒ぎしたり、怖いシーンでは私の後ろに隠れたりする姿を目にすると、〈こういう自然な感情を出せる環境は本当に大切だな〉と実感します。お母さんたちも、「子供らしくいられて安心」と喜んでくれています。

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