【シングルズキッズ株式会社代表取締役・山中真奈さん】人との温かいつながりの中で子供たちの心を育む社会を
孤立しがちな母子家庭を支えるため、山中真奈さんは28歳で「シングルズキッズ株式会社」を設立し、東京で母子家庭専用のシェアハウス事業を始めた。山中さん自身、思春期に家庭に居場所を見つけられず、外で派手な生活を送って寂しさを紛らわせた。そうした経験から、どんな子も「最高にハッピーにしたい!」との強い思いでシェアハウスに住み込みながら、運営にあたる。起業の願いやシェアハウスの取り組み、子供たちの心を育むために必要なことなどを聞いた。
母親の悩みを聞き、支え合う
――シェアハウスの取り組みはどんな思いから始めたのですか?
きっかけは7、8年ほど前、私の周りで子供を抱えながら離婚する友達が増えたこと、さらにその中に親戚に預けられて暮らす子供の姿を目にしたことです。テレビなどで虐待のニュースが大きく報じられ、気になったことも重なります。
私の両親は、離婚はしなかったものの、決して夫婦仲は良くありませんでした。よく言い争いをして、食卓を囲んでも家族の会話はない状態。そうした環境のせいで、私はいつしか家庭に居場所を見つけられず、ギャルをやったり、キャバクラで働いたりと派手な生活をして、外に居場所を求めていました。
家庭で寂しくつらい思いをしている子供たちの気持ちが痛いほど分かります。その頃、不動産会社で働いていて、次第に、大好きな仕事で得た知識とノウハウを生かし、居場所を失っている子供たちの力になりたいと思うようになったのです。
その後、仕事を辞め、起業の方法と子供たちの現状を知りたいと思い、講演会や勉強会に参加するようになりました。そこで、豊かといわれる日本で、子供の6人に一人(当時)が貧困状態にあり、その多くは、母子家庭だと知ったのです。また、経済的には困っていないのに、家庭不和で親の愛を受けられず、不安定な精神状態で毎日を過ごす子供が、思っていた以上に多いことにも驚きました。
そこで2016年に、ひとり親世帯の中でも、仕事や家事、育児の全てを一人で担わなければならないワンオペ育児ママや、マンパワー不足になりがちな働く母子家庭を支えようと、シェアハウスの建設を考えました。東京・世田谷区内の一戸建て住宅を借り、6世帯の母子家庭が住めるように改装して、2017年6月から運営を始め、現在は5世帯の母子14人が暮らしています。