【JAXA「はやぶさ2」プロジェクトマネジャー・津田雄一さん】遙かなる宇宙へ――生命誕生の謎に迫る
地球誕生は約46億年前、そして生命誕生は約40億年前といわれる。ではどのようにして生命が誕生したのか――。その疑問を解き明かすため、日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球から3億キロメートル、太陽の向こう側のかなたにある小惑星「リュウグウ」で探査に挑んでいる。地球帰還は東京五輪が開催される2020年。「はやぶさ2」プロジェクトマネジャーの津田雄一さんに、小惑星探査に懸ける思いを聞いた。
一人ひとりの思いが遠く小さな星に刻まれて
――小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還から8年余り。「はやぶさ2」も小惑星「リュウグウ」での探査活動に着手し、宇宙探査に対する関心も高まっています
「はやぶさ」初号機は、世界で初めて小惑星イトカワに着陸し、サンプルを持ち帰る技術があることを実証してみせました。特に、帰還地のオーストラリア・ウーメラ砂漠の夜空を明るく照らしつつ燃え尽きていく本体と、その前を飛ぶ帰還カプセルの感動的な映像を覚えている人も多いでしょう。「はやぶさ」が宇宙のかなたで繰り広げた冒険は大きな話題となり、映画にもなりました。その「はやぶさ」効果なのでしょうか、「はやぶさ2」は打ち上げ前から世間の注目を集めました。
まず今回の目標天体の正式名称は公募によって決まりました。その名も「Ryugu(リュウグウ)」。浦島太郎が竜宮城から玉手箱を持ち帰ることと、「はやぶさ2」がカプセルに小惑星の岩石を採取して持ち帰ることと重なることから、最終的にこの名前が選ばれました。
また、2018年10月には、小惑星「リュウグウ」に着陸する探査機の目印となるターゲットマーカーの投下に成功したのですが、実はその中に国内外18万人の名前が刻まれたマイクロフィルムが埋め込まれていたのです。それは、プロジェクトの趣旨に賛同し応援してくれた人たちの名前です。ターゲットマーカーの投下により、一人ひとりの思いが地球から3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」に刻まれたことになります。
――「はやぶさ2」のプロジェクトが目指すものとは?
一番のミッションは、サンプル・リターンといって、目的地である小惑星「リュウグウ」でサンプルを採取し、地球に持ち帰ることです。これ自体は「はやぶさ」と同じ任務ですが、位置づけが全く異なります。「はやぶさ」が工学技術を実証する実験機だったのに対し、「はやぶさ2」は狙った小惑星を探査する実用機として開発されたものなのです。初号機の度重なるトラブルを教訓に、さまざまな改良も加えられています。
注目すべきは、目的地の小惑星の性質にあります。「はやぶさ」が訪れたイトカワは有機物を含まないS型と呼ばれる小惑星でした。一方、「リュウグウ」は、炭素を比較的多く含むC型の小惑星で、生命に不可欠な有機物や水分子が含まれると考えられています。