認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長 湯浅誠氏 『つながり続ける こども食堂』発刊

本紙連載「幸せをむすぶ『こども食堂』」の著者である湯浅誠氏の『つながり続ける こども食堂』(中央公論新社)がこのほど発刊されました。

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「いいよいいよ、みんなおいで。みんなで一緒に食べようよ」。こども食堂を運営する人たちが、訪れた子どもや、大人に対してよく口にする言葉だ。この言葉かけによって、たくさんの子どもたちが居場所を見つけ、大人を含めた多くの人たちがつながりを深めてきた。無縁社会と呼ばれる日本で、つながりを取り戻そうとする人々の営みが「こども食堂」だと著者は記す。その数は全国で5000に上り、今も増え続けているという。

本書は、路上生活者や困窮者の支援、内閣府参与、大学教授などを歴任した著者が、全国のこども食堂を取材したルポルタージュ。各地の活動を紹介しながら、貧困対策などに取り組んできた経験を踏まえ、こども食堂がさまざまな社会の課題を解決する可能性を示す。例えば、年齢や属性、所得の多寡で人を分け隔てることのない取り組みは、地域の人を結ぶ居場所として機能している。異年齢集団での遊び、多様な大人との触れ合いは、子どもたちの人生の選択肢を広げている。子どもの貧困や孤食、虐待予防、超少子高齢化などの対策として大きな力を発揮するというのだ。

新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する中で、多くのこども食堂が活動中止に追い込まれそうになった。だが、地域や住民同士のつながりを大切にしたい、子どもたちを応援したいと願う人々の努力により、多世代交流拠点としての活動が今も続けられている。本書には、共に生きる社会を築こうとする人たちのこども食堂に寄せる思いと、そこに集う人々の心温かな人間模様が描かれている。

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『つながり続ける こども食堂』
湯浅誠著
中央公論新社
1600円(税別)

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