眞田芳憲氏の遺作となる『〈大逆事件〉と禅僧内山愚童の抵抗』を佼成出版社から発刊

中央大学名誉教授で、長く世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会平和研究所所長を務めた眞田芳憲氏の『〈大逆事件〉と禅僧内山愚童の抵抗』(佼成出版社)が発刊されました。眞田氏は昨年11月に急逝、本書は平和を願い続けた同氏の遺作となります。

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本書は、「大逆事件」(1910~11年)に連座し、37歳で刑死した禅僧・内山愚童(1874~1911年)の評伝である。

大逆事件とは、明治天皇の暗殺を計画したという容疑で多くの社会主義者、無政府主義者が逮捕・処刑された事件。幸徳秋水以下24人が死刑(半数は無期懲役に減刑)、2人が有期刑とされた。この事件は日本近代史研究において、明治の国家権力を持った人々が社会主義者や無政府主義者らを弾圧するため、恣意(しい)的に「大逆罪」(旧刑法73条「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」)を適用し、陰謀事件をでっち上げた計画的犯罪とされている。

愚童は、社会主義者たちとの会合の場で、「やっつけるならばせがれ(=皇太子。後の大正天皇)である」と放談したとの理由で大逆罪に問われることになる。当時、曹洞宗林泉寺の住職を務めていたが、逮捕・起訴後に宗門から僧籍剝奪(除名)に処せられるとともに、長く「逆徒」としての汚名を着せられ、1993年の宗内復権(名誉回復)まで83年の歳月を要した。

これまで社会主義者、無政府主義者の側面が強調されてきた愚童について、遺(のこ)された著作や書簡などから、本書では仏教者としての実像に光を当てる。仏教思想に基づいて、明治期の天皇制国家、戦争、身分制、貧富、社会的性差などをどのように捉え、何を訴えたのか――これまでにない、宗教者としての思想と行動が明らかになる。

著者はローマ法研究の権威であり、中央大学法学部で長く教壇に立った。また、仏教徒としての生き方に徹し、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会平和研究所所長を務めるなど宗教的平和活動にも心血を注ぎ、昨年11月に急逝した。

明治維新から150年を経た現代。日本では、いわゆる「共謀罪」が立法化され、大逆事件を生んだ社会状況がよみがえるのではないかといった懸念の声が多く聞かれる。本書を通して、大逆事件当時の社会を知るとともに、時代の先を歩んだ一禅者の生き方から、宗教を指針として生きる意義や、混迷を深める状況下での宗教者の役割など多くを学ぶことができる。

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『〈大逆事件〉と禅僧内山愚童の抵抗』
眞田芳憲著
佼成出版社
2000円(税別)