立正佼成会 庭野日鑛会長 8月の法話から

三省

儒教の論語に有名な「吾(われ)日(ひ)に吾(わ)が身を三省(さんせい)す」という言葉があります。三度、自分を振り返ってみるということです。この「省」という字には、自分を「省みる」という意味と、さらに「省く」という意味もあります。ですから、ただ省みるだけでは五十点で、もう一つの省くということがあってはじめて、三省の「省」の字が生きてくるんだということです。

自分が日頃どうであったかと省みると同時に、忙しいときに、やらなくてもいいことまでやってはいないかと、省くことを心がけていくことが大切であります。ただ一文字の中に、そういう深い意味合いがあるのだということを知り、自分の心を見つめると、あるいは日頃の生活の中で忙しいことをもう少し省くことができて、余裕が生まれるのではないかと、そんなことも、この字から教えられるように思います。
(8月1日)

自己をわするる

私は朝起きて毎日、道元禅師の「仏道をならふといふは、自己をならふなり。自己をならふといふは、自己をわするるなり」という言葉を唱えております。私たち人間は、みんな心を持ち、自分も世界中の人々も等しく仏性を具(そな)えているということですから、自己だとか他己(たこ)だとかという、個人としての我(が)を忘れて、みんな一つなんだと、そういう心、気持ちをしっかりと持つことが大事だと受け取らせて頂いております。

しかしながら、世界を見ますと、なかなかそう簡単ではありません。私一人がそんな気持ちでいても、あるいは私たち佼成会の信仰者一人ひとりがそのような大きな心、「自己をわするる」という心になっても、道元禅師のおっしゃるような世界にはなかなかならないわけであります。けれども、朝、そうした気持ちを持って、毎日を過ごさせて頂いておるところであります。
(8月15日)

地球人の自覚

1988年に、当時の宇宙飛行士たちが宇宙から地球を撮った『地球/母なる星』という写真集が出されました。それに、東京大学の竹内均名誉教授が、日本語版の監修の言葉を載せておられます。『“地球人”の自覚』というタイトルです。

「あの水に富んだ小さい球の上に50億人の人が住んでいる。この実感から、それ以後人々は地球のことを『宇宙船地球号』と呼ぶようになった。それはとじたシステムであり、たとえば汚染物質をわれわれの目につかないところへ捨てることはできても、それらをこの『小さい』球の外へほうり出すことはできない。そういう実感を人々はもった。この地球上で、戦争といったつまらぬけんかをするのがいかにばかげたことであるかをも知った。その意味でこの写真は、世界平和に貢献したといってよい」

その翌年に、ラッセル・シュワイカートという米国の宇宙飛行士が見えて、佼成図書館のホールで講演をされました。当時、私たちは、こうしたことを通して、宇宙船地球号に乗っているのだから、地球人がみんな戦争などしないで、仲よくしていかなくてはいけないと、そういう気持ちを強く持ちました。

今、また戦争や紛争が起こっているわけでありますが、何とか早く、人類一人ひとりが、みんな宇宙船地球号の乗組員なのだという気持ちになることが大事であり、特に指導者がそのような気持ちになることが一番早い平和への道であります。私たちもこうした写真集などを見ながら、宇宙船地球号で共に生きていく一人ひとりであるということをしっかりと自覚して、精進させて頂くことが大切だと思っております。
(8月15日)