楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~(3) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

モヤモヤを消す魔法 ①手を動かし、心を整える
動物にも人間にも、本来備わっている秘めた力がありますが、私たちは自分の思い込みでその力に制限をかけ、人生もったいないことをしている、というのが前回までのお話でした。人間は、感情に振り回されて不合理な行動をしてしまう生き物です。そして、どのような選択や行動であっても、その結果を引き受けるのは自分自身です。
もう誰にも後悔はさせない
今回は、ある女性経営者のエピソードをご紹介します。彼女はリハビリ型デイサービスを経営し、現場の最前線で働いています。施設では、驚くほど熱心に利用者のリハビリに取り組み、経営効率を度外視してでも、一人ひとりに寄り添う姿勢を大切にしています。どうして、そこまでできるのかを尋ねると、義母の話をしてくれました。
彼女は40歳のときに2人の子どもを連れて離婚。心機一転、大学に入学し、未経験から福祉やリハビリを学びました。その後再婚し、新しい生活を始めた矢先、義母が脳梗塞を発症。リハビリの知識を活かしてサポートしようとしたものの、「あなたの言うことは聞きたくない! 放っておいて」と拒まれてしまいます。
10年後、義母はいよいよ寝たきりとなり、「あのとき、あなたの言う通りリハビリしておけばよかった」と言いました。しかし、後悔していたのは義母だけでなく、自分の気持ちを押しつけてしまった彼女自身も同じでした。
だからこそ、彼女は「後悔を残す人を出さない」と決意し、障がいがあってもその人らしく幸せに生きられるよう、自分の経営する施設ではリハビリに前向きに取り組んでもらえる工夫と努力を重ねています。
感情豊かに生きることは大切ですが、感情に任せて行動し、後悔することは避けたいものです。では、どうすればいいでしょう?

イラスト・みよし
A4メモ書きのすすめ
カギは、自分の中にある「モヤモヤ」に気づき、合理的に行動することです。モヤモヤとは、はっきり言えないけど納得できない、心のひっかかりのようなもの。それがあると、明確な意思で行動できず、感情に任せて判断を誤りがちです。
モヤモヤを消すとっておきの方法が、「A4メモ書き」です。これは、経営コンサルタントの赤羽雄二さんの著書『ゼロ秒思考』で有名になった方法です。短時間で思考を整理でき、行動力が爆上がりします。感情の整理にも役立つので、モヤモヤを抱える全ての人に有効です。
やり方は簡単。A4用紙(裏紙でOK)を横向きに置き、上部にテーマと日付を記入。その下に、文章で4~6行、1分間で自分の思いをできるだけ多く書き出します。
たとえば「なんで私ばっかり!」と感じたときは、「今日やるべきこと」「誰に助けを求めるか」などをテーマに、1分で思いつく限り書いてみてください。
何もしないのは、後悔につながります。感情に任せるのもまた、後悔のもと。だからこそ、A4メモ書きを使い、自分の力でモヤモヤを消しましょう。
今月の笑い
「A4メモ書き」「メンタルフロス笑い」の二つを紹介します。YouTube「高田佳子の笑トレで楽生」で、笑いの体操の動画が見られます。
プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫県神戸市生まれ。日本笑いヨガ協会代表、一般社団法人笑いイノベーション学会理事長。早稲田大学非常勤講師。人が一生笑って生きられる環境づくりがライフワーク。40代で老年学修士号を取得し、2009年にインドで笑いヨガを学ぶ。介護予防・認知症予防・ストレスケアに役立つ「笑トレ」を提唱し、科学的知見をもとに心と体を軽やかにする生き方を発信している。
笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”