年頭法話 立正佼成会会長 庭野日鑛
真(ま)っ新(さら)な一年
人を育成することこそが最も重要 創立百年に向け、真剣な取り組みを
あけまして、おめでとうございます。
年が明けて迎える新しい一日は、いわば生まれてから初めてのかけがえのない日です。何歳になろうとも、今日から先の日々は、初めて経験するまっさらな人生です。
中国の古典『大学』の中に「苟(まこと)ニ日ニ新タニ、日日(ひび)ニ新タニ、又(また)、日ニ新タナリ」との言葉があります。
古代中国の名君が、毎日使う水盤(すいばん)(洗面の器=うつわ)に、この銘(めい)を刻(きざ)み付け、日々唱(とな)えて、自らを戒(いまし)めたと伝えられています。
私たちも、日々新たな心で、元気に活(い)き活きと精進する一年にしたいものであります。
さて私は、昨年十一月の教団幹部会で「令和七年次の方針」を次のようにお示ししました。
「人間が現実に留(とど)まらないで、限りなく高いもの、尊いもの偉大なものを求めてゆく、そこに生ずるのが敬(けい)という心である。この敬の心が発達してくると、必ず相対(そうたい)的に自分の低い現実を顧(かえり)みてそれを恥じる心が起きてくる。人間が進歩向上する一番大切なことは敬(うやま)う心を発達させることであり、恥を知ることである。」
以上、先人(せんじん)の至言(しげん)に示された大切な心を踏まえ、今年も私たちは信仰生活を通して、お互い様に、夫婦として、父母として、親として、未来を担(にな)う幼少年・青年達を如何(いか)にして人道に導き、人間形成をはかるか、如何にして家を斉(ととの)えていくか、さらに、日本の伝統を受け継いで立派な国を打ち立てていくか、日々活き活きと務めて参りましょう。
昨年とほぼ同様の内容ですが、本会会員として常に大事にすべきことです。
これまで私は、「人を植える(育てる)」という根本命題(こんぽんめいだい)に全力を尽(つ)くしていきましょうと申し上げてきました。
中国古代の思想書である『管子(かんし)』に「一年計画ならば穀物(こくもつ)を植えるのがいい。十年計画ならば樹木(じゅもく)を植えるのがいい。終身計画ならば人を植えるのに及ぶものがない」とあります。
地域社会や国、世界の未来を考えるならば、人を育成することこそが最も重要であるということです。
その基本は、何より家庭での教育にあります。斉家(せいか)(家庭を斉えること)を通して、しっかりした人間教育がなされて初めて、学校での教育もより充実したものとなり、本当の意味で「人を植える」ということに結びつくからです。
東洋思想の泰斗(たいと)として知られた安岡正篤(やすおかまさひろ)先生のご著書に「父は子どもの尊敬の的(まと)でありたい。母は子どもの慈愛の座でありたい。なぜかなら、家庭は子どもの苗代(なわしろ)だから」という言葉があります。稲(いね)の苗(なえ)を育てる苗代が整っていなければ、秋の収穫など望むべくもないということであります。
こうした人づくりの原点となる役割を、人生の先輩である夫婦(若い世代)、父母(壮年の世代)、親(高齢の世代)がしっかり果たしていくことで、幼少年・青年達の人間性がおのずと育まれていきます。本会の創立百年に向けて、真剣に取り組んでいきたいと切に願っております。
また、かつて聖徳太子(しょうとくたいし)は、「和(わ)を以(もっ)て貴(たっと)しと為(な)す」という言葉を十七条憲法の第一条に掲(かか)げられました。また歴史的に日本の国名は「大和(やまと)」と称(しょう)し、「大(おお)いなる平和」「大いなる調和」の精神を終始一貫(いっかん)することを国づくりの礎(いしずえ)としてきました。こうした日本の伝統は、世界に相通(あいつう)じるものであり、その実現を目指して努力することが、私たちの大事な役割であります。