立正佼成会 庭野日鑛会長 8月の法話から
8月に大聖堂で行われた式典から、庭野日鑛会長の法話を抜粋しました。(文責在編集部)
素敵な物事の捉え方
もうお亡くなりになりましたが、上智大学のアルフォンス・デーケン教授はとてもユーモアのある方でした。私はこの方の講義を聞いたことがあるのですが、とても考えさせられることをおっしゃっていました。キリスト教の方ですから、聖書の中にこういう言葉があると話されました。
「明日のことを思い煩(わずら)うな。明日のことは明日自身が思い煩うであろう。一日の労苦は、その一日だけで十分である」
デーケン教授がおっしゃるには、「世の中には思い煩うことを趣味や道楽にしているような人がいます。例えば、明日のお天気のことを心配しているような人です。明日のお天気は自分ではどうしようもないでしょう? 自分ではコントロールすることができないことを心配するのは、無駄な思い煩いです。自分のコントロールできることに全力を傾注する。これによって自分の人生を豊かにする。こういう構えが大切なのではないでしょうか」ということでした。
そしてその後に、デーケン教授は「私は天気が晴れであればアーメン、雨が降っている時はハレルヤです」とおっしゃいました。
私が教えて頂いたところによると、キリスト教の「アーメン」には、神さまの御心(みこころ)のままに、という意味があるそうです。また「ハレルヤ」には、喜悦(きえつ)、すなわち喜びですね、または感謝、そういう意味合いがあるということです。
天気が晴れであれば「アーメン」ですから、晴れたのは神さまの御心のままに晴れたんだ、有り難い、という意味合いがあります。雨が降っても「ハレルヤ」というのは、「ハレルヤ」は喜悦または感謝ですから、雨が降っても感謝するということです。ユーモアで言っておられますが、大変有り難い捉え方、素敵な捉え方だと思っています。
(8月1日)
真の和を理想にもって
78年前、終戦の8月15日に玉音(ぎょくおん=天皇陛下の肉声)放送がありました。私はその時、小学2年生で新潟の(十日町市)菅沼にいたのですが、どこでその玉音放送を拝聴したか、全然記憶がありませんでした。従兄弟(いとこ)に聞きましたところ、生徒はみんな学校に集められたはずだということですから、学校で玉音放送を拝聴したことになります。
いわゆる終戦の詔勅(しょうちょく)の中に、昭和天皇さまの「万世(ばんせい)の為(ため)に太平(たいへい)を開かむと欲す」という大事なお言葉があります。人類永遠の平和の実現を図っていこうというお言葉です。
日本の国には、昔、大和(やまと)――大和(だいわ)と書いて「やまと」――という国号、国の名前がありました。これは、世界の平和は、わが国の古今を通ずる元来の本願であるということです。「大和(だいわ)」ですから、英語で表すと、グレート・ピース(great peace)あるいはグレート・ハーモニー(great harmony)となり、大調和を意味します。
古代日本の文化の偉大な功労者である聖徳太子は、「十七条憲法」の冒頭で、「和を以(もっ)て貴(たっと)しと為(な)す」と宣言されており、この大精神が歴史的に終始一貫する国家的、民族的理想であることを表しています。
昭和天皇さまも、そうした歴史を踏まえて、人類の永遠の平和の実現を図ろうと、「万世の為に太平を開かむと欲す」と詔勅の中で述べられているのです。私たち日本人一人ひとりが忘れてはならない言葉であり、精神であります。
(8月15日)
【次ページ:「『終戦の日』に」「身近な人を愛することから」】