立正佼成会 庭野日鑛会長 3月の法話から
脳を活性化させて過ごそう
足し算や引き算といった単純な計算とか、声を出して本を読む音読とか、そうしたことにより脳が活性化するといわれています。それらは、認知症の改善や予防に役立つという研究もあります。私も読書などをして、気に入った文章は音読します。これが脳の血流を増やし、とてもよろしいようです。
反対に、じっと思考している時は、脳の一部だけしか働いていないのだそうです。テレビゲームをしたり、黙読したりするよりも、音読の方が脳を活性化させ、また、複雑な方程式より単純な足し算・引き算の方が、脳が活発に働いたというのです。その結果は、若い世代から高齢者まで共通だったそうです。ですから、高齢者だけでなく、若者にとっても、脳の活性化のために単純計算や音読が勧められます。
昔は、相当音読が行われていました。こうしたことの中にも、脳や体のために、どういうことが大事なのかが、自然と教えられていたのです。
(3月5日)
毎日新しくなる
こういうことをおっしゃっている方がいます。
『時の流れ』
人は
年を重ねるたびに
新しい時をつくります
私自身が
新しい人になるのです
見上げる空は新しい
見つめる花も新しい
年月のなかで
もっともっと
自由になれ
人は
老いるのではない
新しい人になるのだ
(渡邊美知子氏作 2020年7月7日付産経新聞の「朝の詩=うた=」より)
新たな見方で、本当に元気づけられます。私たちの体は、瞬間瞬間に新陳代謝をしていて、それは新しいということでもあります。老齢化していくのではなく、新しくなるのだということを教えて頂きました。
(3月5日)
仏さまからの伝言
私は、教会が周年を迎える際のパンフレットに、『周年に寄せて』と題して、こんな言葉を載せています。
「私たちのいのちは、いつ、どのように始まったのでしょうか。
直接的には、父母のお陰で、いまの自分があります。ずっと先をたどっていくと、祖父母、曾祖父・曾祖母、その祖先、そして原始人、サルの一種、数億年前のアメーバにつながるといわれます。もっと先をたどると、炭素や水素、ナトリウムといった物質の原子に到達し、さらに進むと陽子、電子、中性子、中間子という素粒子にまで行き着くそうです。
ロボット博士として知られる森政弘先生(東京工業大学名誉教授、工学博士)がこうおっしゃっています。
『ぼくたちの生命は、お母さんから生まれたときに突然に発生し、死ぬ時に一瞬にしてなくなってしまうと普通に思われているようなものではない。永遠の過去から永劫の未来へと受け継がれてゆく、宇宙の大生命そのものがぼくたちの命なのである。そして同時に宇宙の一切合切がぼくたちの親戚なのだ』
思わずハッとさせられる言葉です。このことを一人ひとりがしっかりと見つめ、いのちの不思議、有り難さを深く自覚することによって、どんな苦難に出遭っても、前向きに生きていく活力(エネルギー)がわいてきます。希望が叶(かな)っても叶わなくても、とらわれずに淡々と生きていく姿勢や覚悟が定まるのです。そして、いま、ここに頂いているいのちに感謝し、明るく、優しく、温かく、しかも厳粛な気持ちで生きていくことこそ、仏さまの私たちへの一番大事な伝言(メッセージ)であります」
今日3月5日は、教団創立84周年という「周年」ですから、お互いさまに読み返し、また、自分に言い聞かせながら精進させて頂きたいと思い、紹介しました。
(3月5日)
自分が分かるように話す
私に対して、「人がいない所で、よくいつもと同じように話ができますね」と言われる教会長さんがいます。私は「人がいない方が話しやすいのです」(笑)と言っています。
101歳で亡くなられた松原泰道先生(臨済宗龍源寺住職)の息子さんである松原哲明先生と親しくさせて頂いていました。ご自坊の龍源寺にも時々伺い、いろいろなことを教えて頂いていました。
松原哲明先生のご著書の中に、こんなお話がありました。
ある時、講演を頼まれて、広い会場に行かれたそうです。その日は台風が来て、講演に集まった人は10人以内でした。松原先生のお師匠さんも行かれたようで、講演をされたあと、お師匠さんが「ご苦労であった」と褒めてくださったそうです。
お師匠さんは、最後に「ところで、誰も来なかったらお前はどうするか」と問われたそうです。すると、松原先生は「話(講演)はしません」と返事をしたらしいのですね。そうしたら、お師匠さんから「馬鹿者!」と叱られたというのです。「講演をする、説法をするというのは人のためではない。自分のためにするのだ」と。「だから、人がいなくてもしなくては駄目だ」と教えられたということです。
私もこうして人のいない大聖堂で、そのことを思い出しながら、話をさせて頂いています。目の前に人がいなくても、自分が自分で分かるように話をすることが本来のあり方なのだということです。
(3月15日)