立正佼成会 庭野日鑛会長 11、12月の法話から

コロナ禍での過ごし方

新型コロナウイルスの感染が、また増えてまいりました。感染しないように努力はしていますが、いつどういうふうに感染するかは分かりません。ですから、私たちにとっては、「心構え」が大事であると思います。

コロナ禍では、マスクの着用、手洗いなど、いろいろなことを実行しています。それは大事なことに違いありません。それにも増して、人間が元気に生き生きと暮らすために一番大事なのは、生きるための心構えをしっかりと持つことです。

例えば、心構えが決まれば、水行して、冷水を浴びても風邪をひくことはないといわれます。食べないと、普通は体がもたない、弱っていくと考えられますが、自ら志して断食をすれば、体が丈夫になります。心構えを持って断食をする、あるいは水行をとると、むしろ風邪もひかない、身体も丈夫になるというのですから、人間は心構えを持つことが大事なのです。

私も断食を経験しましたが、「この断食の経験をすれば、どんなところでも生きていける」という感じを受けたことを思い返します。コロナ禍においても、私たちが心構えをしっかり持つことが大事になります。

昔から「予防は治療に勝る」といわれています。事が起きてから、それをなおそうとすると大変時間がかかります。コロナ禍が、いつまで続くのかは分かりませんが、心構えをしっかりと持つ、そして予防の措置をとって元気に生活したいものです。
(12月1日)

画・茨木 祥之

信心は日々の繰り返しによって

ご宝前で仏さまをお参りする時には、お願いをするより、むしろ感謝をさせて頂くことが大事です。

「病気が治りますように」という差し迫った願いがある人でも、「おかげさまで今日一日生きていられました」という感謝の祈りの方が大切で、上等の祈りであると教えて頂いています。さらに、「世のため、人のためにこういうことをさせて頂けたのも、仏さまのおかげです」という気持ちで感謝する方が、上等とされています。

「病気を治したい」「お金儲(もう)けがしたい」というお願いではなく、「自分の心を広めてくださって有り難い」と感謝の気持ちで、日々、仏さまを礼拝(らいはい)する――これが、より深まった信仰であり、信心のあり方です。

師走に、お互いさま、ぜひそのようなことをはっきりとつかんで、日々の精進を繰り返してまいりたいと思います。

私たちは、「今日は本当に良い気づきを頂いて、有り難い」と思っても、次の日になると、それを忘れてしまって、また仏さまにお願いを始めることが多いわけです。そういう意味で、私たちの信仰、信心とは、一日一日、新たに発心(ほっしん)していく繰り返しです。

ちょうどそれは、男性ですと朝、洗面をして、ひげを剃(そ)る、女性ですとお化粧をするように、毎日発心していくということです。発心しないと、どうしても私たちの心はだらけてしまって、しまりがなくなります。日々、発心の繰り返し――お互いさま、そのような心で精進してまいりましょう。
(12月1日)

あらゆるものが仏の説法

道元禅師のこういう歌があります。

峯(みね)の色 渓(たに)の響きも 皆ながら わが釈迦牟尼の 声とすがたと

今、大聖堂の外の通りには、イチョウがきれいに黄葉しています。そのように、川の流れの音とか、峯の紅葉した色とか、そういうものは皆、お釈迦さま、ご本仏さまの声であり、姿であり、それは説法であるという内容の歌です。

陽(ひ)が昇る時の光景ほど、この世に美しいものはないといわれます。陽が昇る時の荘厳な様子は、私たちがいくら言葉で表現しようとしてもできません。これは、まさに仏さまがそのような素晴らしい光景をお説法してくださっているのだというのが、道元禅師の捉え方であり、この歌の内容です。

もちろん、法華経は、そのまま仏さまのお説法です。その上で私たちが見るもの、聞くもの、あらゆるものを仏さまのお説法として受け取っていくことが大事であると思います。
(12月8日)