バチカンから見た世界(161) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

イスラエル軍のレバノン空爆による死者は2000人とも推定され、100万人にも及ぶ避難者が発生している。シリアからの難民をも含めて、その多くが、イスラエル軍によって度々空爆されてきたシリアに向かっているとのことだ。

ローマ教皇フランシスコは9月29日、ベルギー訪問の帰路、新聞記者の質問に答える形で、レバノンの悲劇的な状況に言及し、「(イスラエルによる)防衛は、受けた攻撃に比例したものでなければならない」と戒めた。「(過大な)反撃が実行されるならば、それは、支配欲への志向であり、道徳を超える(蹂躙=じゅうりん=する)」とも述べ、イスラエル軍による虐殺と破壊を非難した。

これに先立つ9月25日、カトリック教会を含む中東のキリスト教諸教会の合議体である「中東教会協議会」(MECC)は、イスラエル軍によるレバノン攻撃を“犯罪”とし、「国際法の定める原則、ジュネーブ条約、武力闘争を規制するあらゆる協定を蔑視する、侵略者の論理」と糾弾する声明文を公表した。国際社会に対しては、レバノン情勢に「緊急に介入し、明確な立場を表明する」ことによって、「空爆、組織的な所有物の破壊、食料や医療品の供給停止などによって実行される犯罪を非難するように」と呼びかけている。

世界教会協議会(WCC)のジェリー・ピレー総幹事は10月1日、イスラエルによる空爆やレバノン南部への侵攻は、「明確な国際法の蹂躙」「レバノン国家の主権侵害」と訴える声明文を発表した。イスラエルによる国際法の無視は「暴力の渦と(レバノンやガザ地区における)集団処罰を恒常化していくだけ」「イスラエルによって継続されている攻撃は、広範囲にわたる破壊と悲劇的な一般市民の生命の喪失を生み、容認できない」と批判した。