バチカンから見た世界(140) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)と並行し、中国は旧ソ連圏の中央アジア5カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)との首脳会議を西安で開催した。ローマ教皇庁外国宣教会(PIME)の国際通信社「アジアニュース」は、中国と中央アジア諸国との首脳会議が、遊牧民諸部族の統一後に、中国、中央アジア、東欧などを征服して人類史上最大規模の帝国となった「モンゴル帝国を彷彿(ほうふつ)させる」と報じ、「中国が中央アジアの政治、経済ルートからロシアの排除に成功した」と伝えた。

さらに、中央アジア5カ国の首脳が、「モスクワで開催されたロシアの戦勝記念日(5月9日)パレードに参加し、(孤立した)プーチン大統領を慰めた後、西安に駆けつけた」と報道。「モスクワの裏庭」と称される旧ソ連圏の中央アジア諸国が、「言語、社会的にも脱ロシア化」に向けた道を歩んでおり、「中国からの支援を大歓迎している」と記した。ウクライナ侵攻に気を取られ、中央アジア諸国への配慮を怠るロシアの状況は、「中国と、その同盟諸国にとって例外的な機会を提供している」というのだ。

中国主導の首脳会議では、インフラや通商だけではなく、各国の防衛や軍事費の増強についても合意が成立。カザフスタンのトカエフ大統領は、「中国による中央アジア諸国の主権擁護に対する支援」に感謝を表明した。中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の物流ルートが、ロシアの領土を通過せずに実現することも可能になってきた。微妙な関係を保持し続ける中国とロシアだが、両国間の結びつきが、ウクライナの和平とその後に生まれてくる世界秩序に与える影響は大きい。