バチカンから見た世界(124) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ロシア正教会を追放すべきか、対話の余地を残すべきか――世界教会協議会

8月31日から9月8日まで、ドイツ南部のカールスルーエで世界教会協議会(WCC)の「第11回世界大会」が開かれた。同大会には、世界120カ国以上にある350を超えるキリスト教諸教会(総信徒数約5億8000万人)から代表者約4000人が参加した。

WCCの第1回世界大会は1948年、第二次世界大戦の廃虚から復興していく世界情勢を背景に、オランダの首都アムステルダムで開催された。第11回となる今大会は、周知の、あるいは、忘れられた数多くの戦争や紛争が続く世界状況の中で開催されたものだ。イオアン・サウカ暫定総幹事は、第1回大会と同様、第11回大会が「新しい始まり、諸国民間の和解に向けた希望を表現するものとなっていくように」との願いを表明した。

8月31日から9月8日まで、ドイツ南部のカールスルーエで行われたWCCの第11回世界大会

開会式に先立つオンラインでの記者会見では、ロシアによるウクライナ侵攻が話題の中心となった。「ロシア、ウクライナ間での対話に関するWCCの役割」「なぜWCCはロシア正教会を追放しないのか」と問われたサウカ暫定総幹事は、WCCがロシア正教会の追放に関してさまざまな要請を受けたことを明かしながら、「WCCの中央委員会は、私たちの機関を自由な対話の場としていく意思を確認し、ロシア正教会の追放を承認しなかった」と答えた。

さらに、「重要なのは、私たちの個人的な見解ではなく、相対する両者が出会うこと」と強調し、「世界大会の開会を前に、ウクライナ、ロシアの両使節団が共に食事をし、同じテーブルに着いて準備する姿を見た」と証言。「政治と宗教によって離反させられているが、われわれの機関は、出会いの場としての役割を果たしていく。事実として、ウクライナへの侵攻以来、初めて両国の教会指導者が出会う場となっている。対話の場を開き、何が起きるかを見守っていこう」と述べた。