バチカンから見た世界(84) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
国連人権理事会(第42会期)が9月9日から27日まで、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で行われ、この間、関連イベントとして「人類の友愛に関する文書」についてのシンポジウムが開催された。アラブ首長国連邦(UAE)とエジプト、バチカンが共催したもので、UAEのオバイド・サレム・アルザービ大使(ジュネーブ国連常駐代表)が議長を務め、エジプト、オマーン、サウジアラビア、イラン、イエメンの代表者がスピーチした。
席上、アルザービ大使は、「UAEは、教皇フランシスコが『キリスト教とイスラーム教の関係における新しいページ』と評した『人類の友愛に関する文書』を活動に移していくため、高等委員会を設置した」と語り、これまでの経緯を説明しながら、その意義を強調した。世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事の名代として参加したピーター・プルーブ国際問題委員会委員長は、「各家庭にはさまざまな違いが存在するが、違いを克服し、問題や失敗を乗り越えていく要素が存在している。その本質的な要素とは愛である」とスピーチした。
また、バチカン欧州国連本部常駐代表のイバン・ジュルコビッチ大司教は、アユソ委員長からのメッセージを代読。この中でアユソ委員長は「人類の友愛に関する文書」を「諸宗教対話の歩みにおける一里塚」と評しながら、「傷ついた世界を癒やすための共通善を追求していく、われわれの日常活動が出発点となる」との考えを示した。
アユソ委員長とトゥヴェイト総幹事は、スペイン・マドリードで聖エジディオ共同体(カトリック在家運動体、本部・ローマ)主催の「第33回世界宗教者平和のための祈りの集い」に参加していたため出席できなかったが、両師はマドリードで「人類の友愛に関する文書」の重要性について熱弁を奮った。トゥヴェイト総幹事は、「文書」について、「キリスト教徒たちが他の諸宗教共同体と共に分かち合う人間性をさらなる認知するためのものであり、共通善の実現へ向けて歩む協調の長い道程」を示したものであると説明。アユソ委員長は、友愛が「それぞれの宗教伝統の中に、すでに存在している」と強調し、それゆえに「私たちは、家庭、社会、仕事場、行く先々で、世界が何よりも必要としている(友愛の)精神を実践していくことが求められている」と語り掛けた。