バチカンから見た世界(79) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

中東などからの難民が生活しているブルガリアの施設を訪問したローマ教皇(写真提供=バチカン記者室)

5日、教皇はブルガリア正教会の聖シノド館を訪問。ネオフィト総主教、聖シノドのメンバーたちを前に、「流血(殉教)の教会一致(エキュメニズム)」を訴え、「この国の、なんと多くのキリスト教徒たちが、キリストという名のために、苦に服したことか。特に、前世紀の(共産主義無神論からの)迫害時に、だ!」と語り掛けた。さらに、「世界では、(今でも)他の多くの(キリスト教徒の)兄弟姉妹たちが信仰のために苦しみ続けているが、彼らは私たちに、閉じこもらないで、門戸を開放するように、と訴えている」と述べ、キリスト教諸教会間における一致の重要性を強調した。

これに対し、ネオフィト総主教は、「一つで聖、普遍的な使徒教会の船長と舵(かじ)取りはイエス・キリスト」だと述べ、キリスト教諸教会の一致を主張した。

6日、シリアやイラクの人々が多く収容されている難民キャンプを訪れた教皇は、「今日、移民や難民の世界は十字架、人類の担う十字架を象徴しており、この十字架によって多くの人々が苦しんでいる」と発言した。ブルガリアの諸宗教指導者たちに対しては6日、再度、「人類の友愛に関する文書」の内容を引用しながら、「平和が私たちに対して、対話を道、協調を私たちの行動、相互理解を方法とするようにと要請し、促している」と述べた。

7日、教皇は北マケドニアの首都スコピエに到着。大統領府で執り行われた歓迎式典で、同国を「ビザンチン(キリスト教)とオスマン(イスラーム)の過去を有する国」と表した。また、教皇は、同国にはマケドニア人、アルバニア人、セルビア人、クロアチア人などが暮らし、正教、イスラーム、カトリック教会、ユダヤ教、プロテスタント教会と数多くの宗教が信仰されていることに言及。同国の「多民族、多宗教の性格」を高く評価した。

この後、同国の青年諸宗教指導者と面会した教皇は、「一人ではなく、他の人々と共に、一緒に夢見てください。他の人々と対立する夢は、絶対に避けてください。一人で夢見る時には、蜃気楼(しんきろう)を見る危険に陥り、現実に存在しないものを見てしまいます。一緒に夢を見れば、その夢は実現できます」と諭すように語り掛けた。

加えて、「数カ月前、私も友人であるアズハルのタイエブ総長と共に、あなたたちと同じように夢を見ました」と発言。互いの信仰が、双方の信徒たちを支援し、「お互いが愛する兄弟を見るように促すことを宣言した文書に署名しました」と述べ、「人類の友愛に関する文書」にかける期待を明らかにした。

スコピエは、「貧者の聖人」と呼ばれた聖マザー・テレサの生誕地。教皇は大統領府でスピーチに立った際、「隣人に対する愛徳を、自らの存在の最も崇高な規範であるとして全世界から称賛され、見捨てられた人々、投げ捨てられた人々、より貧しき人々に対する奉仕の道を開拓していった」とマザー・テレサを追憶した。