バチカンから見た世界(71) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
10月28日に行われたブラジル大統領選の決戦投票で、「ブラジルのトランプ」との異名を持つジャイル・ボルソナーロ下院議員が当選し、「ポピュリストの仲間入りを果たした」といわれている。各国のポピュリズム政権が、互いに結束を強めようとしており、懸念が高まっている。来年の5月に予定されている欧州議会選挙の最大の関心事は、ポピュリズムの諸政党が欧州大陸レベルでの政権を担当するまでに伸びるかどうかに向けられている。
11月6日の中間選挙を控えていた米国では、トランプ大統領の熱狂的支持者とされる男性が、同大統領の政敵と見なされる民主党のオバマ前大統領やクリントン元国務長官らに爆発物を送りつけた容疑で逮捕された。白人男性が、黒人の信者が多いキリスト教会を武装攻撃するといった事件も発生した。また、選挙前の緊張した状況にあった10月27日には、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で白人の男性による銃乱射事件が起こり、11人のユダヤ教徒が死亡した。「全てのユダヤ人は殺されるべき」と叫んで乱射し、「ユダヤ教徒は悪魔の子供」などと表明していたロバート・バウアーズ容疑者(46)の犯行を、米連邦捜査局(FBI)は「憎悪犯罪」として捜査を開始した。
トランプ大統領は、「憎悪によって恐ろしいことが起きている」と述べ、再発防止のためには「銃規制」ではなく、「礼拝所の防衛装備」や「死刑」が必要だとの考えを明らかにした。これに対し、ピッツバーグのユダヤ教指導者たちは、『トランプ大統領が問題(銃乱射事件)の一部』と題する大統領宛ての公開書簡を発表した後に、同大統領の弔問を拒否する意向を表明した。