バチカンから見た世界(46) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

エルサレムは2国家と3宗教の都市

トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認し、米大使館をエルサレムに移転するように指示した12月6日、世界のキリスト教界から一斉に抗議の声が上がった。

世界教会協議会(WCC)のオラフ・トゥヴェイト総幹事は同日、声明文を発表。「われわれの信仰と教会創設の起源となった聖なる都市」であるエルサレムを、「WCCは3宗教と2国民の都市として承認する」と述べ、トランプ大統領の宣言に抗議の意を表した。聖都が有する普遍的な性格の重要性と、これまでの2国家原則に基づくイスラエル・パレスチナ問題の解決を指示し、東エルサレムを未来のパレスチナ国家の首都として示唆するWCC総幹事の声明文だ。

さらに、エルサレムの帰属問題は、イスラエル人とパレスチナ人間の対話による和平合意の枠内で解決されるべきだと主張。トランプ大統領の一方的な行為が、「中東と国際社会に憂慮すべき事態を引き起こした」とし、国際社会の中で、エルサレムの帰属問題は慎重に検討されていくべきとの「米国の70年間にわたる政策を破るもの」として非難している。また、トゥヴェイト総幹事は、トランプ大統領の今回の行動が「中東における安全と安定に重大な影響を及ぼす」とのヨルダン国王・アブドラ2世の見解を引用し、トランプ大統領に「再考」を促している。

一方、エルサレムのキリスト教諸教会の大司教、司教などの指導者たちも同日、トランプ大統領に宛てた書簡を公表。この中で、米国がエルサレムの位置付けに関するこれまでの理解と政策を変えることに対し、憂慮の念を表明しながら、政策の変更が、エルサレムに憎悪、紛争、暴力、苦痛をもたらし、目標とすべき「一致のゴール」を遠ざけ、人々を分裂の深みに追い込むと非難している。その上で、エルサレムのキリスト教諸教会の指導者たちは、「大統領、私たちが、さらなる愛と最終的な和平に向けて歩けるように」と要望し、その和平とは「(ユダヤ人のみならず)全ての人にとって開放されたエルサレムなしには構築できない」と強調。米国が、国際的な合意に基づく従来のエルサレムの位置付けを支持するよう求めた。

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