バチカンから見た世界(39) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

©バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」

宇宙ステーションから見た地球は……

さらに、教皇は「私たちがどこから来て、どこへ向かうのか」と質問。ネスポリ氏は「自分たちは技術者なので」と困惑しながら、「エンジニアや物理学者だけでなく、あなた(教皇)のような、神学者、哲学者、詩人、作家たちが宇宙ステーションで生活し、宇宙における人間の存在の意味について探求してほしい」と願った。一方、ネスポリ氏は「知れば知るほど、自身の知識の浅さが理解できる」とも語った。

「宇宙飛行士となったのはどうしてか。宇宙ステーションで、何が最も大きな喜びとなったか」。この質問には、ロシア人のセルゲイ・リャザンスキー飛行士が、「私の祖父が、世界で初めて軌道に乗った人工衛星・スプートニクの建造に携わり、祖父から人類にとっての宇宙の重要さを教わった」と答えた。

米国のランディ・ブレスニック氏は、対話の後半で自身の胸中を明かした。「宇宙ステーションからの地球は、あたかも、神の眼で地球を見ているかのようだ。国境がなく、大気圏も薄く、消えてしまいそうな地球を見ていると、全ての人々が共に生き、より良き未来の建設のために協力しなければならないと感じる」。また、米国のマーク・ヴァンデ・ヘイ氏は、重力のない宇宙ステーションでの「上下のない生活」について尋ねられ、「自分で上下を定め、自らの感覚と方法で自身の小宇宙、小世界を定める」と、自己決定の重要性を挙げた。

宇宙ステーションにおける「協力関係」については、米国のジョゼフ・アカバ氏が応答。「宇宙ステーションは、米国、ロシア、日本、カナダ、欧州の9カ国等の協力で成り立っている。ここでは、個人や世界を超えて協力の精神を育み、それによって知識の旅を行えている」と述べた。教皇は、「あなたたちは、“小さな国連”です。それぞれが力を合わせることによって、全体として大きな力を発揮できることを証明している」とコメントした。ローマ教皇が国際宇宙ステーションの宇宙飛行士と懇談したのは、教皇ベネディクト十六世(2011年)に次いで、2人目となった。