中央学研の西主幹が「国際仏教学会」で発表 梵文法華経写本の系統分類に新手法提示

世界の仏教研究者を前に自らの研究成果を発表する西主幹。質疑応答では活発に意見を交換した

立正佼成会中央学術研究所学術研究室の西康友主幹がこのほど、ドイツのライプチヒ大学で開催された「国際仏教学会第20回学術会議(IABS)」で研究発表を行った。

同学会は世界各国の研究者が集い、最新の知見を共有する国際的な学術交流の場であり、西氏の参加は今回で4回目となる。第12部会「仏教研究とデジタルヒューマニティーズ(人文情報学)」において、「梵文(ぼんぶん)法華経写本における系統分類―PCを用いたレーベンシュタイン距離の適用―」と題して発表した。

発表では、約一世紀前に編纂(へんさん)された梵文法華経写本初の校訂本『ケルン・南條本』に焦点を当てた。同書は刊行当初から脚注の不備や、書写年代・出土地域を区別しない編集方針などの問題が指摘されてきた。西氏は20年以上にわたりこの課題に取り組み、2021年からは日本学術振興会の助成を受けて研究を進めている(研究課題『梵文法華経諸問題解明のための基盤テキスト構築―『ケルン南條本』校訂へ向けて』)。

今回の報告では、校訂本に用いられた複数の写本をローマ字化してテキストデータ化し、研究協力者と共同開発したレーベンシュタイン距離(二つの文字列を同一にするための最小編集操作回数の数値)を応用した解析プログラムを活用。偈文句(げもんく)の類似や異読を効率的に抽出する方法を紹介した。さらに、写本間の類似率を数値化することで、書写年代や出土地域に基づく精緻な系統分類の可能性を提示した。

発表後、西氏は「新たな資料や研究者ネットワークを取り込みながら、梵文法華経写本の伝承過程の解明に資する成果を積み重ねていきたい」と今後の抱負を語った。

なお、西氏の略歴・研究成果はウェブサイトから閲覧できる。

https://www.cari-saddharmapundarika.com/