楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~(6) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

ゲラゲラ筋で健康と幸せをつくる
「元気な姿勢が元気をつくる」というのが前回のお話でした。体調が悪いときや、気分が落ちているときでも、ガッツポーズや万歳のようなポジティブな姿勢をとることで、脳は「元気だ」と判断し、気分が変わり、行動も変わります。
笑いも同じです。声を出して「ハハハハ」と笑うと、脳は「楽しい」「嬉(うれ)しい」と感じたときと同じ状態になり、幸福ホルモンとも呼ばれるセロトニンやオキシトシンといった脳内物質が分泌されるといわれています。さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールの値を下げることもわかっています。苦笑や嘲笑といったネガティブな笑いもありますが、「ハハハハ」と声を出し、息を吐くだけで、脳が「笑っている」と判断し、心身の状態が笑ったときと同じになるのです。
無理に笑わず、毎日の習慣に
ただし、つらいときや不安なときに、無理して「元気だ」と自分に言い聞かせて笑うのは逆効果になる場合があります。こころに噓(うそ)をつくことで、こころとからだの乖離(かいり)が進むと、本当にこころを病んでしまうこともあるからです。
そこでお勧めしたいのが、「ハハハ呼吸」です。
ポイントは、笑う気分かどうかに関係なく、息を吐くことに集中する。ヨガや腹式呼吸など多くの呼吸法があるように、「ハハハ呼吸」もそのひとつと割り切って、声を出す呼吸そのものに意識を向けます。
心理学では「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しくなる」「人は幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せになる」と言われます。実際に楽しくなくても笑う動作だけで、脳は「笑っている」と認識し、笑いの効果が得られます。自律神経が整い、ストレスが減り、睡眠や腸の働きまで改善されます。
健康があってこそ、楽に楽しく生きられるのではないでしょうか。こころの在り方は健康に影響を与えますが、逆も同じです。からだが健やかであることが、こころの健康の第一歩になります。呼吸の方法でからだを変える方が、こころを変えるより簡単です。

イラスト・みよし
笑いは全身運動!
笑いは、実は全身を使う有酸素運動です。横隔膜や腹筋、顔の表情筋をはじめ、呼吸に関わる筋肉まで総動員します。しかも、笑いの動作だけで、心拍数が上がり、血流が促進されるので、生活習慣病予防、更年期の不定愁訴や老化予防、認知症予防にも役立つことが研究でわかっています。
しかし、日常生活の中で自然に起こる笑いだけでは、健康維持に必要な量を確保するのは難しいものです。
そこで役立つのが「笑トレ」です。笑う動作を意識的に行うことで、呼吸法と筋トレ、ストレス軽減を一度にかなえる、まさに超簡単で楽にできる“運動効果抜群”の習慣です。
ただし、笑うための筋肉も、使わなければ衰えてしまいます。普段あまり笑わない人は、顔が引きつったり、「ハハハハ」と息を長く吐けなかったりします。私はこの筋肉を「ゲラゲラ筋」と呼んでいますが、他の筋肉と同じで、鍛えれば必ず復活します。
ゲラゲラ筋を鍛え、ハハハ呼吸と元気ポーズを習慣づける。こうして自分の脳を上手に“手懐(てなず)け”れば、「笑うから幸せになる」は誰にでも実現できるのです。
今月の笑い
ホホハハ体操
YouTube「高田佳子の笑トレで楽生」で、笑いの体操の動画が見られます。
プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫県神戸市生まれ。日本笑いヨガ協会代表、一般社団法人笑いイノベーション学会理事長。早稲田大学非常勤講師。人が一生笑って生きられる環境づくりがライフワーク。40代で老年学修士号を取得し、2009年にインドで笑いヨガを学ぶ。介護予防・認知症予防・ストレスケアに役立つ「笑トレ」を提唱し、科学的知見をもとに心と体を軽やかにする生き方を発信している。
笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”