楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~(5) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

「元気ポーズ」でスイッチON!

モヤモヤした気分を変えてコロナ禍の絶望状態(ちょっと大げさ!?)から脱し、元気な私に戻るきっかけとなったのが、前回までに紹介した『ゼロ秒思考』のA4メモ書きです。お試しいただけましたか?

使うのは、裏紙(A4用紙)でも十分。テーマに沿って1分間、思いつくままにメモを書くだけのシンプルな方法です。それだけで、びっくりするほど気分が変わります。

頭の中にあるものを、1分で書き出して、それを目で見て確認することで、気持ちが整理でき、モヤモヤが消えます。何枚か書くと、大きな悩みでさえ解決に向かうことも珍しくありません。

他人の心はもちろん、自分の心さえも、変えることは不可能と思えるほど難しいものです。でも、自分の気持ちをササッと文字にすることで、感情に流されることなく、客観的に見つめ直すことができます。そして何より、頭の中でこんがらがっていた思考が整理され、気分がスッキリし、行動的な自分になるスイッチが入るのです。

とはいえ、どうしてもやる気が出ない日もあります。書こうとしても、文字にできないことだってある。そんなときには、即効性があってすぐに元気が湧いてくる方法があります。

それが、「笑い」「姿勢」「呼吸」です。

“からだ”を変えれば、“こころ”は変わる

笑うことで心身の健康に良い影響があるという話は、今では多くの医師や研究者が認めています。今回はその中でも、「姿勢の力」に注目してみましょう。

たとえば、ものすごく嬉(うれ)しい知らせが届いたとき、あるいは落ち込むような出来事があったときの自分の姿勢を思い出してみてください。面白いことに、それらの姿勢は世界中どこでも共通なのです。

オリンピックで1位でゴールテープを切る選手は、両手を大きく広げて胸を張り、ゴールラインを駆け抜けます。あれが喜びの象徴的な姿勢です。嬉しいときは自然とガッツポーズが出ます。

反対に、大金が入った財布を落としてしまったり、大切な食器を割ったりして途方に暮れると、肩は落ち、背中が丸まり、うなだれてしまいます。

このように、こころの状態がからだに影響を与えていることを、私たちは日常生活で常に目にしているのですが、実はその逆も真実なのです。

つまり、「元気な姿勢をとると、こころが元気になる」という心理学や脳科学の研究結果があるのです。

イラスト・みよし

笑トレでは、笑いの体操の終了時、決まって「ホッホッハハハッ」と声を出して手拍子をします。最後に「いいぞ、いいぞ、イェーイ!」と万歳するように両手を高く上げ、上方を見上げます。「元気ポーズ」という名前をつけました。

この動作で、自分の脳は「今、自分は元気なんだ!」という信号を受け取り、元気なときのこころとからだの状態になるのです。「元気ポーズ」で脳内物質が変化し、その結果、やる気と自信が引き出されるのです。

ネガティブな状態だと気づき、気分を切り替えたいときには、「元気ポーズ」だけでも試してみてください。最後に、空を見上げて「ハハハハ……」と声を出してみましょう。1分もやると、気分が変わります。こころとからだのつながりが、実感できるはずです。

言葉より早くこころを変化させるのが「姿勢」です。簡単で楽にできるこの知恵を、ぜひ使ってみてください。

今月の笑い

(クリックで動画再生)

JUST LAUGH(ジャストラフ)

YouTube「高田佳子の笑トレで楽生」で、笑いの体操の動画が見られます。

 

プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫県神戸市生まれ。日本笑いヨガ協会代表、一般社団法人笑いイノベーション学会理事長。早稲田大学非常勤講師。人が一生笑って生きられる環境づくりがライフワーク。40代で老年学修士号を取得し、2009年にインドで笑いヨガを学ぶ。介護予防・認知症予防・ストレスケアに役立つ「笑トレ」を提唱し、科学的知見をもとに心と体を軽やかにする生き方を発信している。

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