立正佼成会 庭野日鑛会長 7月の法話から

オンラインで開催された海外教会長指導会に出席する庭野会長(7月7日、法輪閣)

7月に大聖堂で行われた式典から、庭野日鑛会長の法話を抜粋しました。(文責在編集部)

宇宙の一切合切が親戚

今年1月に亡くなられたロボット博士の森政弘先生(東京工業大学=現・東京科学大学=名誉教授、工学博士)が佼成出版社から出された『心眼』という本があります。ちょっと長いですけれども、ご紹介したいと思います。

「ぼくたちの生命というものは、お母さんから生まれた時に突然に発生し、死ぬ時に一瞬にしてなくなってしまうと普通に思われているようなものではないことがわかってくる。空(くう)の力のあらわれとして、永遠の過去から永劫(えいごう)の未来へと受けつがれてゆく、宇宙の大生命そのものがぼくたちの命なのである。そして同時に宇宙の一切合切がぼくたちの親籍(しんせき)なのだ。この宇宙の大生命は寸刻も休むことなく、はつらつとして活動し続けているのである。ぼくたちの一刻一刻の呼吸も、一瞬一瞬の心臓の動きも、この大生命のあらわれなのだ。
 ぼくたちは、あらゆることに先立って、まずこのことに目ざめる必要がある」

こうしたものを読んでいると、本当にそうだなと思います。普段は命というものがどうして生き続けているのか、そんなこともよく分からないで、私たちは生きているわけであります。こうしてしっかりとしたお話を読ませて頂くと、せっかく頂いたこの命を無駄にしないように生きていかなければと、つくづくと思います。
(7月1日)

天敵

ある月刊誌に、こんなお話がありました。生命体の中で、人間にだけ天敵がいないのだそうです。これを書かれた方は、なぜだろうかと長い間、疑問に思っていたのですが、ある時、このように思い至ったそうです。人間の天敵は外ではなく、心の中にいるのだ、と。

人間を襲い、蝕(むしば)む天敵。それは心の中に巣くう不平不満である。事あるごとに湧き起こってくる不平、不満、愚痴こそ、人間を滅ぼす天敵である。そうおっしゃっています。歌人の生方たつゑさんのお母さんは、ともすれば不満顔をしていた少女の頃のたつゑさんに、「不満を持つ間は、人は幸せからはじき返されますのや」と、よく言っていたそうです。人生を知り尽くした人の英知の言葉であろう、ということです。

人間を損(そこ)なう天敵の対極にあるもの、これが、私たちがいつも開祖さまから教えられている感謝であり、それが一番大事であるということです。心が感謝の思いに満ちあふれた時、あらゆる不平不満は一気に消え去ります。感謝こそ、人間という生命体を健やかに成長させる根幹であると教えられています。
(7月1日)

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