楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~(2) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

サーカスの象
赤ちゃんはみんな天才で、立ち上がるとき、歩くとき、失敗を恐れず何度でも挑戦し、成長していきます。しかし、成長するにつれて周囲の言葉や態度、また自分の思い込みによって、自分の可能性にブレーキをかけてしまっている。無敵の自分を取り戻すために、自分の内側からエネルギーが湧いてくる笑トレをしましょうというのが、前回のお話でした。
子どもはよく笑います。大人になると笑う回数が減るのは、無意識のうちに、制限をかけているのかもしれません。笑うことで、子どものような柔軟な発想と、元気が出るのは確かです。成長すれば、知恵がつきますが、一方で自由さに制限をかけていることもあります。
「サーカスの象」のお話をご存じですか? サーカスの象は、子どもの頃から、芸を覚えさせられます。調教師に鞭(むち)でたたかれ、鎖で杭(くい)につながれ、つらくても逃げることはできません。やがて象は大きく育ち、杭を引き抜くだけの力を持つようになります。しかし、象はそこから逃げようとしないのです。それが細いロープに変わっても、そこから動こうとしません。長い時間をかけて「自分には力が無い」と思い込んでいるからです。これは、『自分を磨く方法』(アレクサンダー・ロックハート著)という本に書かれていたエピソードです。私は自分が「サーカスの象」になっていないか、いつも問いかけることにしています。

イラスト・みよし
子どもの頃の夢は、ずっと先に形を変えて叶(かな)うこともあります。友人の母親は、昭和2年生まれで、戦争で勉強が十分にできなかったと語っていました。彼女は時間を見つけては、さまざまな習い事をしていました。還暦を過ぎてからお琴を習い始め、90歳で水彩画を始めました。
私自身は、幼稚園の頃のフライトアテンダントになりたいという夢は叶いませんでしたが、世界中を仕事で旅することはできました。いつか海外に住みたいという夢も、60代後半に、夫と2人でマレーシアへ移住するという形で実現しました。夫もまた、「退職後は南国で毎日ゴルフを楽しみたい」という夢を叶えることができました。
年齢、お金、健康等、いろいろな不安はありますが、できない理由を探すより、「どのようにしたらできるのか」を合理的に考えてみませんか。本当は自分には力があることが、分かります。
再びサーカスの象の話です。ある時大津波が来たのです。一頭残らず杭を引っこ抜き、山に逃げて助かったのだそうです。本当は力があるのに、「無い」と思い込んでしまっていただけなのですね。
自分には、できる力がある! 自分の知らない可能性は、自分の内側に眠っています。それを起こすために、子どものように無邪気に笑ってみてください。自分の内側から、力が湧き出すはずです。
今月の笑い
「象さん笑い」です。象の鼻は極めて優秀で、においを感じるほか、上唇の働きもします。手や腕の働きもできるので、強い力で引っ張ることもできます。
両足を広げ、しっかり床につけます。両手を合わせてゆっくり動かし、ハハハハと声を出しながら、背中のストレッチ。さらに、遠くのものをつかんで力を込めて引っ張ったり、水をかける動作で背中をそらせたりして、全身を動かします。
プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫県神戸市生まれ。日本笑いヨガ協会代表、一般社団法人笑いイノベーション学会理事長。早稲田大学非常勤講師。人が一生笑って生きられる環境づくりがライフワーク。40代で老年学修士号を取得し、2009年にインドで笑いヨガを学ぶ。介護予防・認知症予防・ストレスケアに役立つ「笑トレ」を提唱し、科学的知見をもとに心と体を軽やかにする生き方を発信している。
笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”