「世界の仏教と対話を続けるバチカン」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

世界の仏教と対話を続けるバチカン

ローマ教皇フランシスコは2月1日、中国の嵩山(すうざん)少林寺からの使節団をバチカンに受け入れ、懇談した。

中国河南省にある中岳(ちゅうがく)嵩山の中の少室山(しょうしつざん)の北麓に位置する同寺は、インドから渡来した達磨(だるま)大師が禅を伝えた地として知られており、少林武術の名刹(めいさつ)でもある。2010年にはユネスコの世界遺産に登録された。同寺では1月19日から22日まで、『未来の世界へ向けての禅フォーラム』と題する国際会議が開催され、世界各国の霊的指導者、専門家や知識人が参加し、「世界レベルでの瞑想(めいそう)による個人の福祉と諸国民間の調和ある関係の発展」について話し合われた。同会議には、イスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長も参加し、2019年にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで教皇と共に署名した、世界平和と共存のための「人類の友愛に関する文書」について説明した。少林寺では現在、達磨大師による中国への禅導入の歴史、古文書、遺品などの展示による少林寺の歴史と文化の概観、同寺の有する芸術・文化的宝物の展示と、3階から成る博物館を建立中だ。

これに先立ち、1月30日には、モンゴルの仏教使節団が初めてバチカンを訪問した。同国の首都ウランバートルで教皇使節を務めるジョルジョ・マレンゴ枢機卿が付き添った。

使節団に向かい、教皇は2023年に自身が同国を訪問したことを追憶しながら、「その時の最も重要な出来事の一つが、諸宗教者との出会いだった」と述べた。教皇は「天に視線を上げて歩む、兄弟姉妹の大きな一致の輪という、全ての男女の深い霊的希求について話し合った」と回顧し、「共通する宗教的追求という名のもとに、あなたたちを兄弟としてバチカンに迎え入れた」と語った。1970年代からモンゴルで進展した「深い宗教的刷新」について、教皇は「同国が肥沃(ひよく)な宗教伝統を回復し、同時に、民主化への努力を成功させていった」と称賛した。「信教の自由と、異なる宗派間の対話を促進したあなたたちの努力は、全ての宗教伝統間における相互尊重の環境を生み出し、その社会を、物質的な繁栄だけではなく、兄弟間の連帯という本質的な価値観によって豊かにしていった」とも評価した。こうした価値観を推進することによって諸宗教は、「正義に適(かな)い、結束した社会の構築に向けて、本質的な役割を果たす」のだと言う。

さらに教皇は、今年、カトリック教会が祝う「聖年」に言及し、「聖年は巡礼、和解、希望の時である」と説明しながら、「自然災害や人間同士の紛争によって性格付けられる世界状況」にあって、「諸国民の間と、私たちにとって“共通の家”である地球との調和を促進していく、より平和な世界の構築を共通の目的としていこう」と呼びかけた。そして、「平和という普遍的な願望に向けた私たちの具体的な行動が課題とされており、特に私たち、各宗教の教えに根を張る指導者は、暴力を破棄し、平和文化を抱擁するように人類を導いていく責任を負っている」と考えを示した。

最後に教皇は、同使節団とバチカン諸宗教対話省との交流が、「対話、友愛、信教の自由、正義と調和を基盤とする社会の構築を促進していくように」と希望し、スピーチを結んだ。

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