スペインの歴史が生んだ諸宗教対話指導者の逝去――アユソ枢機卿(海外通信・バチカン支局)
スペインの歴史が生んだ諸宗教対話指導者の逝去――アユソ枢機卿
11月25日に逝去したバチカン諸宗教対話省長官のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット枢機卿は、ローマ教皇フランシスコのほとんどの国際旅行に同行し、特に、キリスト教徒が少数派の諸国への訪問を「友愛の旅」と呼んでいた。枢機卿に任命されて1カ月後の2019年11月には、教皇の来日にも随行した。だが、23年の教皇のモンゴル訪問に随行した後、体調を崩し、ローマ市内のカトリック総合病院への入院と手術を繰り返していた。そして先月、同病院で危篤状態に陥り、天に召された。72歳だった。
訃報を受け、立正佼成会の庭野日鑛会長、庭野光祥次代会長は27日、同省に献花と弔文を送付。同日の葬儀ミサの前に、水藻克年ローマセンター長(現・浜北教会長)、水藻佑佳国際伝道グループスタッフ、細谷恭一郎ロンドンセンター長がバチカンの同省事務所を訪れて献花を届け、次官のインドゥニル・ジャナカラトネ・コディトゥワック・カンカナマラゲ神父に弔文を手渡した。
教皇は26日、アユソ枢機卿の属していたコンボーニ宣教会の総長に宛てた弔電の中で、「模範的な献身と、デリケートな魂をもって福音と教会に奉仕した兄弟」を情愛と称賛を込めて追憶した。そして、エジプトやスーダンでの情熱のこもった宣教活動、ローマ教皇庁アラブ・イスラーム研究所所長、バチカン諸宗教対話省長官としての活動を高く評価し、「諸国民と諸宗教間における友愛を促進し、柔和さと叡智(えいち)をもって、人間に対する神の愛を証(あかし)していった」と惜しんだ。
アユソ枢機卿の葬儀ミサは27日、バチカンの聖ペトロ大聖堂で執り行われた。枢機卿団団長のジョヴァンニ・バッティスタ・レ枢機卿が司式し、約60人の枢機卿、大司教、司教、神父が合同司式者として参加した。教皇は、葬儀ミサ後に執り行われた「惜別の儀」を司式した。レ枢機卿は、葬儀ミサの説教の中でアユソ枢機卿の経歴をたどりながら、「彼は、一人ひとりの人間が、人種、言語、人間条件の違いを超えて、唯一の人類家族に属していると確信していた」と振り返った。そして、アユソ枢機卿の尽力を高く評価し、「世界のあらゆる地域を駆け巡り、兄弟なるイスラーム、ヒンズー教、仏教、シーク教、神道、儒教、道教、他の諸宗教伝統の信徒たちに、個人的な友愛関係を通して、対話を構築していくことが可能であると呼びかけ」「諸宗教対話がカトリック教会の本質的な使命である」とのメッセージを伝達していった、と述べた。
聖ペトロ大聖堂の中では、アユソ枢機卿の家族、親族と共に、バチカン諸機関の関係者、聖職者、一般信徒、そして、友人であった多くの諸宗教指導者たちが、レ枢機卿の追憶の言葉に耳を傾けていた。特に、アユソ枢機卿の功績を象徴するように、イスラーム指導者たちの姿が目立った。2019年にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで教皇フランシスコとイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長が共に署名した「世界平和と共存のための人類友愛に関する文書」の精神に沿ってUAEに創設された「人類友愛促進のための高等委員会」、「アブラハム信仰家族(ユダヤ教、キリスト教、イスラーム)の家」(合同礼拝所)や「ムスリム長老評議会」の関係者などだ。