中央学研の西主幹が「RIRCチャンネル」と日本印度学仏教学会で発表

「RIRCチャンネル」『宗教ニュースを読み解く No.37』に出演した西氏(写真左)。本会の教え、自身の研究テーマについて論じた(「YouTube」の画面」)

立正佼成会中央学術研究所学術研究室の西康友主幹がこのほど、国際宗教研究所宗教情報リサーチセンターが運営するYouTubeチャンネル「RIRCチャンネル」の『宗教ニュースを読み解く No.37』に出演した。

宗教情報リサーチセンターでは、宗教に関する社会情報や学術的情報を収集・分析し、広く一般に公開している。RIRCチャンネルはその事業の一環で、国内外の宗教ニュースをはじめ宗教や宗教文化に関する基礎的な事柄について解説するもの。中央学術研究所が国際宗教研究所の賛助会員であることから、西氏に出演の声がかかった。

No.37では『立正佼成会大聖堂建立60周年~仏教系新宗教と法華経~』をテーマに、同センター長を務める國學院大學名誉教授の井上順孝氏が西氏に問いかけるQ&A方式で進められた。

冒頭、西氏は30年間取り組んできた梵文(ぼんぶん)法華経写本を言語学的に分析する研究について説明。研究は「根本仏教(初期仏教)」の教えと、大乗仏典である「法華経」の共通部分を文献学的に実証するものと説き、法華経には、初期仏典の偈文句(げもんく)の引用や初期仏典を再構成・再解釈した部分が多数存在することが分かってきたと述べた。

また、西氏が大正大学で博士号を取得した論文『法華経における方便思想の研究』から、「方便思想」について解説を求められた。西氏は、法華経の頻出語句である「巧みな方便」は「方法・手段・方便」と「巧みな・熟練された」の語句が組み合わさってできていると指摘。「方法・手段・方便」は「近づくこと」が原意であり、そこから「方便」という言葉が「仏の境地に近づくこと」の意味になったと述べ、「法華経における『巧みな方便』とは、生きとし生けるものが、如来・仏と同じ境地になるための手段の全て」との見解を示した。

さらに方便品では、仏は生きとし生けるものを「如来の知見に駆り立てる」ためにこの世に現れ、さまざまな方便を用いて法を説いていると指摘。「如来の知見に駆り立てる」の語句は、「如来」「智慧(ちえ)」「見解」「駆り立てる」という四つの梵語が組み合わされていると説明した。その中で「駆り立てる」の語句は、「鼓舞する」「激励して人をその気にさせる」と言い換えられるとし、「如来の知見に駆り立てる」には「自分も仏の境地に至りたい」との気持ちを起こさせる意味があると強調。それ故、「巧みな方便」によって教化された者は仏の境地に至るために菩薩行に励むようになると、法華経における方便思想について解説した。

このほか、仏教系新宗教の多くの教団が法華経の教えとともに、先祖供養を重視することについても問いが投げられた。西氏は、本会草創期では「先祖供養」が貧・病・争などを解決する手段とされていたが、1960(昭和35)年以降、方便ではなく法華経を基礎にした学びや実践が、人々の救い救われの中心となっていると説明。一方で、春季・秋季彼岸会、盂蘭盆会(うらぼんえ)の法要が大聖堂や各教会、各家庭で催され、大勢の会員が法華経の読誦(どくじゅ)をもって先祖供養に取り組む実情に触れ、「自分の代に至るまで連綿と生命をつないでくれたご先祖を大切にする先祖供養は、とても身近で、自然な感情に根ざしているもの。一信仰者として大事にしたい」と述べた。

10月17日の動画公開後、視聴回数は900回を超え、他教団の研究者をはじめ閲覧者から感想が多数寄せられている。以下のサイトから閲覧できる。https://www.youtube.com/@rirc2197

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