WCRP日本委 「平和のためのAI倫理」国際会合の実施を岸田首相に報告
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は8月21日、広島市で開催された国際会合「平和のためのAI倫理:ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」(7月9、10日)について、岸田文雄首相に報告した。同日本委の杉谷義純会長(天台宗妙法院門跡門主)ら4人が東京・千代田区の首相官邸を訪問。立正佼成会から、同日本委理事の庭野光祥次代会長が同席した。
同会合は、教皇庁生命アカデミー、WCRP/RfP日本委、アラブ首長国連邦のアブダビ平和フォーラム、イスラエル諸宗教関係首席ラビ委員会による共催。広島市の平和記念公園内に位置する広島国際会議場で実施され、日本を含む13カ国から宗教指導者や学者、企業関係者ら150人が参加した。
この中で、同アカデミーが2020年に発表し、AI(人工知能)に対する倫理的なアプローチの育成を訴えた「AI倫理のためのローマからの呼びかけ」に、13組織(11宗教、2大学)から16人が署名。また、79年前に当時の最先端技術を軍事利用して甚大な被害がもたらされた広島の地に集う意義を確認し、AIが人類の平和のために活用されることを呼びかける「平和のためのAI倫理 広島アピール」が全会一致で採択された。
首相官邸での会談では、冒頭、杉谷会長が、同会合に寄せた岸田首相のビデオメッセージ、河野太郎デジタル大臣の出席などに謝意を表した。また、被爆地・広島での開催、AIの研究を進める世界的なハイテク企業のマイクロソフト、IBM、Ciscoから首脳陣が臨席するなど、メディアからの注目が高かった一方、国内企業の参加がなかったことから、「日本でもこうした動きを広めていかなければならない」と決意を表した。
岸田首相は、今年イタリアで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、ローマ教皇フランシスコの講演に感銘を受けたと話した。その上で、AIが人間の本質に関わる深い部分に影響を与えるものであると認識し、社会全体で議論を深めていく大切さを強調した。さらに、昨年のG7広島サミットで、AIに関する国際的なルール作りを目指す「広島AIプロセス」を立ち上げ、賛同国が50を超えたことを紹介。同会合が広島で行われた意義にも理解を示し、「AIの議論はまだ始まったばかり。進化も著しく、どれだけ私たちの社会に影響を与えるか、分からない部分も多い。ぜひ宗教者の皆さまにも、引き続き今回のようなご努力を続けて頂きたい」と期待を寄せた。
これを受け、同日本委の戸松義晴理事長(浄土宗心光院住職)は、マイクロソフトのブラッド・スミス社長から、「企業としては技術開発を進めていくが、その使われ方に関しては、社会全体で考えて頂きたい。ぜひ宗教者の皆さまも一緒に考え、声を上げてほしい」と伝えられたことを紹介。さらに、AIの問題について「日常生活の中でも、檀信徒や門徒、会員の皆さまと話をし、その重要性について理解を広めていきたい」と語った。
また、光祥次代会長は、「六根(眼、耳、鼻、舌、身、意)」を具(そな)える身体を持つ人間が、「身体を持たない存在としてのAIと、どのように関わっていけるかが大事なテーマ」と強調。今後も、日本社会や宗教界でAIに対する議論や理解が進むことを期待するとともに、自身も学びを深めていきたいと述べた。