人口減少時代の老い支度 身も心も健やかになる供養とは
人口が減少し、単身世帯が増加する中、それでもなお、先祖供養や墓守のことを大切にしながら限りある人生を豊かに生きるには、どんな心構えが必要なのだろうか――。庭野日敬開祖の法話をひもときながら、弔いや供養の現代的な在り方を示す識者の寄稿、老い支度を始めた体験談を通して、自分らしい人生を送る秘訣(ひけつ)について考える。
身も心も健やかになる供養とは
庭野日敬著『法華経の新しい解釈』(ワイド版)から
供養というのは、仏に対する感謝の心を表わす行ないです。(41ページ)
経典を読誦(どくじゅ)すれば、仏の教えが深く心に植えつけられ、心が清められますから、もともと読経ということは自分自身の成道のためにする行であります。ところが、これを先祖の霊前において行なえば、自分が受けるべき功徳を先祖に「ふり向ける」ことになります。先祖の霊の成仏をたすけることになります。だから、亡き人の霊前で読経することを回向というのです。(472ページ)
回向ということは、ひとえに「他」のためにすることではありますけれども、やはりその功徳はかならず自分の身に返ってくるということです。(中略)先祖の霊に対する最大の回向は、自分自身がりっぱになることです。菩薩行を実践することです。これほど先祖の霊を喜ばせ、安心させることはないからです。ですから、読経やお題目を唱えるだけでなく、心の持ちかたや行ないのうえで自分自身を浄化・向上させるということを心がけなければならないのです。(473ページ)
『庭野日敬法話選集・5』から
何よりもよくないのは、現代の人びとは生死の問題について根本的な心構えができていないことです。(中略)「人間(肉体人間)は必ず死ぬものだ」ということを忘れているのです。(中略)ですから、いちばん大事なことは、「自分は、いつかは必ず死ぬんだ」ということをつねに心の底に据えておくことです。そうすると、不思議に心が落ち着き、ゆったりしてくるものです。「よし、それならば、今の、この瞬間を精いっぱい生きよう」という気持ちが湧いてくるのです。(192〜193ページ)