学林合同のつどい開催 エラ・ガンジー師が講演
学林の大樹(本科)生、蓮澍・海潮音科生、芳澍女学院情報国際専門学校生、光澍生が一堂に会し、諸宗教者との対話を通して学林の使命である「実践的仏教」「諸宗教対話・協力」を深める「令和6年学林合同のつどい」が6月29日、オンラインで行われた。
当日は、『ヒンズー教とガンジー翁の思想と実践』をテーマに、ガンジー開発財団創設者のエラ・ガンジー師が講演した。エラ・ガンジー師は、マハトマ・ガンジー師の孫で、彼の非暴力活動の意志を引き継ぎ、南アフリカをはじめとする世界各地で、差別的な政治制度の廃止を呼びかける運動を続けている。
エラ・ガンジー師は、祖父であるマハトマ・ガンジー師が非暴力主義による社会運動を起こすまでの経緯を紹介。24歳の時に仕事で訪れた南アフリカで、人種による迫害を受けた経験から、マハトマ・ガンジー師は南アフリカに蔓延(まんえん)する差別や侮辱といった容認できない慣行を改めるために行動を起こし、その経験が、後に、マハトマ・ガンジー思想と言われる彼の世界観や信仰観を構築したと説明した。
また、マハトマ・ガンジー師は、贅沢(ぜいたく)なライフスタイルが社会に遍満する不平等や争いの原因であると考えていたと分析。都市での快適な暮らしを離れ、水道や電気のない農村部へと移り、貧しい人々と共に簡素で自給自足の生活を送る中で、あらゆる信仰を尊重していったと話した。
その上でエラ・ガンジー師は、人類が直面する最も重要な問題は、マハトマ・ガンジー師が目指したような共同生活とは反対の、分断や不平等を社会の中に創り出してしまったことであり、それらを克服し、平和で健康的な生活を全ての人が送れるようになることが課題であると強調。マハトマ・ガンジー師の非暴力運動を紹介しながら、その行動の根底には「全ての信仰は良いものであり、ポジティブな要素を持っている」との宗教的調和の思想があったと述べ、「これは皆さまの信仰とも非常に近しいものと信じています」と投げかけた。
さらに、マハトマ・ガンジー思想におけるもう一つの重要な側面として「ジェンダー」を挙げた。マハトマ・ガンジー師はヒンドゥー教徒でありながら自分の信仰と信条を持ち、全てのものに神が宿っていると信じ、植物であろうと人間であろうと、男性であろうと女性であろうと平等だと考えていたと主張。こうした多様性に富んだ思想を表すものとして、彼の遺(のこ)した論文の言葉を紹介した。
「神はその存在を必要とする人々にとっては人格的な神であり、そのふれあいを必要とする人々にとっては、具現化された神であり、最も清らかな本質であり、信仰を持つ人々にとっては絶対的な存在であり、私たちの中にあり、私たちの上にある、私たちを超越している存在である」
最後、エラ・ガンジー師は、地球上の全人類が独自の信仰を持っていて、それぞれの信仰は唯一無二であるとのマハトマ・ガンジー師の考えに触れながら、「無条件で、見返りを期待することなく、全ての宗教者が互いに交流する中で、学び合うことができるのではないでしょうか」と期待を表した。
この後、参加者との対話の時間が持たれた。この中で、大樹(本科)59期生のIさん(23)=京都教会=が、世界平和とは何か、自分たちに何ができるかと質問。これに対し、エラ・ガンジー師は、マハトマ・ガンジー師の非暴力思想に沿って「平和とは暴力がない状態ではなく、憎しみがない状態を指すと、私は思っています」と返した。さらに、憎しみの反対は愛であり、愛を持って皆が自分自身の宗教を真に実践していくことが大事であると強調。「上手に教えを説くことができても、実践しなければ意味がない。実践によって一人ひとりの世界が変わっていけば、世界平和にもいつか到達できる」と述べ、今回のつどいのように他宗教と交流し、相手の宗教から良いところを学び、愛を持って歩んでいってほしいと激励した。