委嘱の新作やリード最初期の名曲を披露――TKWO 第163回定期演奏会
東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)による「第163回定期演奏会」が1月26日、なかのZERO(東京・中野区)で開催された。指揮はTKWO正指揮者の大井剛史氏が務め、約800人が来場した。
演奏会前半は、世界初演となる大井氏とTKWOの共同委嘱作品「ウインド・プレイズ」(福丸光詩作曲)で開幕した。続く「アスパイア」(J・ヒグドン作曲)は日本初演、3曲目はA・リード作曲の交響曲第1番にあたる「金管楽器と打楽器のための交響曲」を、後半は「交響曲第5番《さくら》」(A・リード作曲)を披露。これまでの定期演奏会で発表したリードの交響曲2番から4番と合わせて、今演奏会で、リード交響曲全集が完成した。
最後に、10年前の大井氏の正指揮者就任披露演奏会で1曲目を飾った「科戸の鵲巣―吹奏楽の為の祝典序曲《Edition TKWO》」(中橋愛生作曲)が演奏された。壮大な序奏で幕を開け、精緻な響きの展開に続き、壮麗なクライマックスを形成する名曲が観客を魅了した。
鳴りやまない拍手に応えて再び大井氏が登壇。2014年から務めた正指揮者を、今演奏会をもって退任し、4月からは常任指揮者に就任すると報告した。
続いて、大井氏はアンコールに、石川国体(1991年)のためにA・リード氏が作曲した「ゴールデン・イーグル」を選んだ思いを吐露。能登半島地震に際し、音楽家は何もできないと思ってしまうが、一日も早く、今まで通りの生活を取り戻せるように、「『心は石川の方々と共にある』という気持ちで演奏したいと思います」と語り、曲のトリオ(中間部)に「石川県民の歌」のメロディーがそのまま使われている「ゴールデン・イーグル」を、復興の祈りを込めて奏でた。
演奏終了後、観客から一層大きな拍手が送られた。