被爆したアオギリが世代を超えて 教会の庭で成長し平和を伝える

3世代のアオギリ。左から、広島平和記念公園(HRCP提供)、越後川口教会(同教会提供)、秋田教会

広島の「原爆の日」にあたる8月6日、立正佼成会秋田教会道場の庭に2本のアオギリの苗が植樹された。広島への原爆投下で幹や枝葉を焼かれながらも生き残ったアオギリの“孫(三世)”だ。

78年前、爆心地から1.3キロ離れた旧広島逓信局の中庭に植えられていたアオギリは、熱線と爆風を受けて幹の半分が焼け焦げ、放射線を浴びてそのまま枯れてしまうと思われたが、瀕死(ひんし)の状態を乗り越えて再び芽吹いた。その後、アオギリは広島平和記念公園に移植され、今では青々と葉を茂らせ、毎年、次代に種子を落とし、原爆の凄惨(せいさん)さや平和の尊さを未来に継承している。

この種子をNPO法人ヒロシマ宗教協力平和センター(HRCP)が被爆体験証言者の女性から譲り受けたのは2004年3月のこと。女性は被爆後、自殺まで考えた時に、ひどく傷つきながらも、力強く生き続けるアオギリのたくましい様子を見て、生きる活力を得たことから、アオギリの種を、真の平和を創り、後世に幸せが続くことを訴える「平和の種」として人々に配っていた。この種をHRCPの蜂須賀智子さん(93)が丹精込めて育て、04年の夏、成長した苗を、平和学習に訪れた本会の7教会に託した。

そのうちの一つが越後川口教会に植えられている。庭野日敬開祖、長沼妙佼脇祖の手植えの桜の間に植樹され、雪が降る季節には冬囲いをするなどして、寒さにあまり強くないアオギリを大切に育ててきた。

当時、苗を受け取った総務部長は、「今でも、アオギリに込められた願いは心に残っています。被爆した木から生まれた“子(二世)”が、教会の庭で力強く生きている姿を見て、このアオギリに負けないように生きようと励まされています」と振り返る。

大きく成長した被爆アオギリ二世は、2年ほど前から種を落とすようになった。そこから芽吹いた苗が秋田教会に贈られた。

秋田教会では、苗を鉢で丁寧に育て、8月6日、平和を願って植樹した。峯坂光重教会長は、「二度と戦争を起こさないためには、平和とは何か、争い事を起こす心はどんな時に湧き立つのかと真剣に、具体的に考えることが大切です。その意義を平和の願いが込められたアオギリと共にかみしめていきたい」と語る。

自身が育てたアオギリの子孫が同教会で育てられていると知った蜂須賀さんは、「証言者として核廃絶を訴え、平和を願い続けている身として、育てた種が世代を超えて、平和の種として広がっていることをうれしく思います。私も証言活動をまだまだ頑張るための活力を頂きました」と話した。