〈ひと〉神奈川大学大学院で歴史民俗資料学の博士号を取得 本会中央学術研究所学術研究室員の會澤健裕さん(37)

今春、神奈川大学大学院で歴史民俗資料学の博士号を取得した。パシフィコ横浜国立大ホールで開かれた卒業式では、修了生を代表して、同大学の小熊誠学長から学位記を授与された。「會澤君、おめでとう」。壇上で学長から祝福の言葉をかけられると、緊張でこわばった表情がようやくほどけ、笑みがこぼれた。

「5年間の国内留学を無事終えられ、ほっと安堵(あんど)しています。学位を取れたのは、ひとえに担当教官の周星教授をはじめゼミの仲間、中央学術研究所の皆さん、現地調査や論文執筆で多忙な生活をサポートしてくれた妻の支えのおかげでした。研究成果を教団100年史の編纂(へんさん)や、本会に関する膨大な記録資料のアーカイブズ化に生かせるよう精いっぱい努めてまいります」

2018年、同大学院修士課程に入学し、資料学を専攻。資料学とは記録資料の収集、整理、保存、提供を行うための方法を追究する学問で、歴史学・民俗学の視点を用いて研究に打ち込んだ。

博士論文のテーマに『民間信仰研究史再考―姉崎正治の用語創出とその周辺―』を掲げた。中奥(東北地方)の動植物や自然現象にまつわる信仰習俗を「民間信仰」として学問分野に確立させた宗教学者・姉崎正治の業績を研究したほか、5人の学者の足跡をたどり、民間信仰の研究史をまとめた。

フィールドワークでは東北から九州まで、先達ゆかりの地をくまなく歩いた。民泊して地元住民と語り合い、土地に根づいた信仰や文化を理解した。一方、コロナ禍で現地調査がかなわない時期は、文献資料の読み込みや論文作成の準備に充て、今できる“最善の道”を探った。激しい風雪にさらされても、折れることなくしなやかに生き抜く、〈柳のごとく〉がモットーだ。

立正佼成会の信仰三代目。学林光澍を卒林後、民間企業に2年余り勤めた後、教団本部に入職した。

「教えと世の中、人をつなぐアーキビスト(公文書の収集、分類、保管、公開にあたる専門職)になることが目標です」

現在、佼成出版社と共同でデジタルアーカイブズの構築を進めるほか、本会の信仰生活を後世に残すため、会員への聞き取り作業にも取り組む。

今夏に第一子が誕生予定。門出を迎え、研究者、父親として新たな一歩を踏み出す。