WCRP日本委 G7広島サミット「宗教者による祈りとシンポジウム」での提言文を岸田首相に提出
G7広島サミット「宗教者による祈りとシンポジウム」を終えた世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は5月15日、同シンポジウムで採択された提言文「G7サミットに向けた宗教者提言〜『ヒロシマの心』が導く持続可能な平和をめざして〜」を、岸田文雄首相に提出した。当日は、同日本委理事長の戸松義晴浄土宗心光院住職をはじめ、日本宗教連盟理事長で同日本委特別会員の宍野史生神道扶桑教管長、神社本庁総長で評議員の田中恆清石清水八幡宮宮司ら8人が首相官邸(東京・千代田区)を訪問。立正佼成会から同日本委理事の庭野光祥次代会長が出席した。一行は官邸で岸田首相に面会し、提言文を手渡した。
提言文では、冒頭、原爆死没者慰霊碑に刻まれている「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」との碑文に触れ、原爆犠牲者の冥福を祈り、戦争を繰り返さないことを誓うとともに、過去の悲しみや憎しみを乗り越えて全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和実現を祈念する「ヒロシマの心」を現していると主張。G7サミットが広島で開催される意義を伝え、「ヒロシマの心」を国際政治の場において着実に具現化するためにも、心身に深い傷を負いながら「再び被爆者をつくらない」という信念で核兵器廃絶を訴える被爆者の声に、真摯(しんし)に耳を傾けることを提案した。
また、戦争や紛争のみならず、さまざまな暴力が蔓延(まんえん)し、深刻な問題が頻発している世界情勢の中、宗教者としてG7サミット参加国指導者と共に平和と持続可能な世界の実現に対する責務を果たす決意を明示。その上で、2019年にドイツ・リンダウで開かれた第10回世界大会で共有された、「他者と自己の幸福は本質的に共有されるもの」であり、全ての人が「つながりあういのち」であるとの信念に基づき、「分断から和解、対立から対話へ」「核戦争回避と核兵器廃絶」「地球の持続可能性への責任」「SDGs達成への責任」「極端な経済格差の是正」「信教の自由の堅持」の六つの提言を表明している。
首相官邸での面会の席上、戸松理事長が提言文の内容を岸田首相に説明し、提言文を手交した。岸田首相は、被爆地の広島でG7サミットが開催される意義を述べ、ロシアが強行する力による一方的な現状変更や核兵器による威嚇は「絶対に許してはならない」と強調。G7の首脳が世界に向け、「法の支配による自由で開かれた国際秩序の大切さを明確に示していきたい」と語り、「今回の提言のポイントを念頭に置きながら、しっかりと議論していきたい」と語った。
これに対し戸松理事長は、提言文を採択した広島での「祈りとシンポジウム」について報告し、G7サミットの開催地に広島を選んだ岸田首相の決断に敬意を表明。サミット参加国の首脳らに、原爆の脅威を実感してもらう機会になることを願うとともに、岸田首相に「核兵器のない平和な世界の実現に向けて、日本のリーダーシップを示して頂きたい」と要望した。
さらに岸田首相は、昨年、日本の首相として初めて出席した核不拡散条約(NPT)再検討会議に言及し、「核軍縮を巡って世界が分断されている」と説明。こうした状況下でも「核兵器のない世界を目指すという理想は、皆で掲げ続けていかなければならない松明(たいまつ)」と語り、今回のサミットを「核兵器のない世界を目指す機運を再び盛り上げるきっかけにしたい」と決意を述べた。
◇提言文「G7サミットに向けた宗教者提言〜『ヒロシマの心』が導く持続可能な平和をめざして〜」全文(WCRP/RfP日本委ウェブサイト)