核の軍事使用は犯罪――教皇(海外通信・バチカン支局)

9月26日は、今年で9回目を迎えた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」にあたる。だが、ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は同日、「ロシアは、必要ならば、核ドクトリン(理念)に沿って核兵器を使用する権利を有する」と発言した。また、「ロシアは、敵意を持つ隣国、例えば、ウクライナが核兵器を購入しようとするならば、それを阻止するためのあらゆる努力をする」とも明らかにした。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は同日、米・ニューヨークの国連本部で行われた同国際デーの演説の中で、「核で脅かす時代は終わりにしなければならない」と訴えていた。バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿もスピーチし、ウクライナ侵攻を巡って世界が「核戦争という深淵(しんえん)に近づきつつある」と警告。「核兵器(の開発や保持)には高額の費用がかかり、危険であるばかりか、国際安全保障を危機に陥れる」と指摘した。

また、「世界各国が、核拡散防止条約(NPT)に沿って軍縮義務を遂行するよりも、核の抑止力により強く依存する傾向を強めている」と憂慮を表明。「核兵器全面廃絶のためには、相互信頼を基盤とした調和のある集団的努力が必要」とアピールした。

ローマ教皇フランシスコは同日、「核エネルギーの軍事使用は、特に今日、人間と、その尊厳性のみならず、われわれに共通の家である地球の未来に向けた可能性を否定するという視点から、犯罪である」とツイートした。

国際原子力機関(IAEA)は9月26日から30日まで、オーストリアのウィーンで第66回総会を開催している。その初日、講演に立ったバチカン外務局長(外相)のポール・リチャード・ギャラガー大司教は、ロシアによるウクライナ侵攻が激化を続ける中で、「世界が岐路に立ち、核兵器使用の威嚇によって迫害を受けている」と指摘。「聖座(バチカン)は、全ての国家に対して、あらゆる武器を放棄し、紛争の原因を対話と交渉によって解決するように訴える」と述べた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)