新宗連「信教の自由委」が「靖国神社の政治利用に対する意見書」を岸田首相に提出

新日本宗教団体連合会(新宗連)信教の自由委員会は7月26日、鈴木裕治委員長(妙智會教団理事)名による「靖国神社の政治利用に対する意見書」を岸田文雄首相に提出した。昨年10月と今年4月に行われた同神社の例大祭に合わせ、岸田首相が内閣総理大臣名で真榊を奉納したことに対するもので、以前は行っていなかった真榊奉納を首相就任後に始めたのは、政治的立場を意識したものと受け取られかねないことへの危惧を表した。

新宗連は例年、同意見書を首相宛てに提出してきた。しかし、近年は政治的立場を掲げて靖国神社を参拝し、その事実をSNSなどで喧伝(けんでん)する現職国会議員が与野党に見られることを懸念し、今年はそうした国会議員の所属政党にも意見書を提出することになった。

26日、鈴木委員長は、新宗連政治委員会の力久道臣委員長(善隣教教主)らと共に東京・千代田区の自民党本部を訪れ、同党組織運動本部長の小渕優子衆議院議員に意見書を手渡した。また、これに先立ち、一行は立憲民主党本部(同区)を訪れ、泉健太代表と面会し、同意見書を手交。同党幹事長の西村智奈美衆議院議員、企業・団体交流委員会副委員長の森山浩行衆議院議員が同席した。

意見書では、新宗連として、「戦争犠牲者の慰霊・追悼は国民それぞれが自身の信仰に基づいてなされるべき」との考えであることを改めて強調した。その上で、国会議員の個々の「信教の自由」を否定するものではないとしながらも、首相、閣僚を含む国会議員による同神社への政治的立場に基づく関与は、特定宗教の「援助・助長」にあたり、「当該宗教が戦争犠牲者の慰霊・追悼においては他のものよりも価値が高く、より『正式』なものであるとの評価やイメージを政府が国民に示す行為」になり得ると指摘。憲法に定める「政教分離」原則に違背し、他の宗教の「信教の自由」を侵害しかねないとの懸念を示した。

さらに、同神社に対するこうした関与は、純粋に宗教的なものではなく、支持者へのアピールといった政治的な意図がうかがえるとし、「政治家が宗教団体を政治利用することは当該宗教の宗教性を毀損するもの」と憂慮の念を表明。政府に対し、「政教分離」の原則に基づく賢明な判断と行動を取ることを要望した。

なお、国民民主党の玉木雄一郎代表、日本維新の会の松井一郎代表に宛てた意見書は同27日に郵送で提出された。