中央学術研究所が『大乗仏典思想叢書』第4号、第5号を発刊 法華経の原典研究に寄与
中央学術研究所は11月15日、漢訳『妙法蓮華経(法華経)』の原典(底本)研究に寄与する『Philosophica Mahāyāna Buddhica Monograph Series(大乗仏典思想叢書=そうしょ)』の第4号『マハーヴァスツ――正順逆順詩脚索引』、第5号『ラリタヴィスタラ――正順逆順詩脚索引』の2点を発刊した。同研究所学術研究室の西康友主幹が編纂(へんさん)した。
同研究所は、法華経を中心とした仏典の内容を解き明かし、仏教思想研究の発展に寄与する研究を進めている。これまでに、初期仏典、ジャイナ教の聖典および文学、初期大乗仏典の語彙(ごい)・詩脚索引や写本カタログなど全38点を発行。アジア圏の諸思想や宗教の聖典に対する文献学的研究基盤の整備に資するものとなっている。
『大乗仏典思想叢書』は、法華経研究を中心とした大乗仏典の文献学的、および思想的な基礎研究資料を提供するためにシリーズ化したもの。
今回、発刊された第4号、第5号は、法華経よりも古くに編纂されたとされ、釈尊の前半生を描いた最も古い伝記の一つと位置づけられている『マハーヴァスツ』と『ラリタヴィスタラ』の正順・逆順詩脚索引。これらは、法華経をはじめとする仏典と『マハーヴァスツ』、『ラリタヴィスタラ』との詩脚(偈文)の関連性を探る基礎資料である。
同叢書では今後も、法華経の成立・伝承過程の解明に向け、新たな視座を提供できるよう研究成果を順次刊行していく予定。
西主幹はまた、身延山大学国際日蓮学研究所にも在籍し、「梵文法華経諸問題解明のための基盤テキスト構築――『ケルン南條本』校訂へ向けて」の研究も進めている。今回の索引は、その研究の成果の一つ。同研究はこのほど、文部科学省所管の独立行政法人「日本学術振興会」により、科学研究費助成研究の基盤(C)一般の分野の指定課題研究として採択された。助成期間は今年度から5年間。
中央学術研究所では、同叢書が広く活用されることを願い、同研究所のウェブサイトで全内容(PDF)を公開している。また、国立国会図書館など一部の公共図書館にも提供している。PDF版は以下のURLから入手可能。