ミャンマーの軍事クーデターの解決に向け ACRPとWCRP国際トラスティーズ・日本グループがオンラインセミナー 

ミャンマーの歴史やクーデターの背景を解説する上智大学の根本教授(「Zoom」の画面)

『ミャンマー国民の叫び――政治、宗教、国際社会の役割』をテーマにした特別セミナーが4月10日夜、オンラインで開催された。クーデターを起こした国軍が市民への弾圧を強める同国の現状、現在に至る政治の歴史を知り、解決の糸口を探るもの。アジア宗教者平和会議(ACRP)、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際トラスティーズ・日本グループが主催し、WCRP/RfP日本委員会が共催した。

当日は、上智大学の根本敬教授が『ミャンマー近現代史から見たクーデターの背景』と題して講演。また、根本氏に加え、日本・ミャンマー友好議員連盟会長の逢沢一郎衆議院議員、杉野恭一WCRP/RfP国際委員会副事務総長、在日ミャンマー人女性によるパネルディスカッションが行われた。526人が視聴した。

ミャンマー国軍のクーデターで市民は――政治、宗教、社会の役割から解決の糸口探る

ミャンマーは、1948年にビルマ連邦として英国から独立した後、62年の国軍のクーデター以降、約半世紀にわたって軍事政権が続いた。2011年の民政移管後、15年11月の総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が勝利し、民主化が進められてきた。

しかし、NLDが圧勝した昨年11月の総選挙に不正があったとして、今年2月1日に国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー国家顧問やNLD幹部らを拘束して全権を掌握。これに対し市民が抗議デモや不服従運動(CDM)を各地で展開した。その後、国軍による市民への弾圧は日を追うごとに激化。同国の人権団体「政治犯支援協会」(AAPP)によると、700人以上(10日現在)の市民が犠牲になった。

セミナーでは、基調発題として根本敬上智大学教授が同国の歴史やクーデターの背景について講演した。

民主化運動の象徴で、軍事クーデターへの抵抗を表す「3本指サイン」があしらわれたセミナーのチラシ ※クリックして拡大

根本氏は、1962年から2011年まで軍政が続いた同国の歴史、民政移管後の政治の流れを紹介し、クーデターが発生した背景を詳述した。この中で、国軍は自らの影響力を保持するため、08年、国会の構成に軍人枠(25%)を設けるなど自らに有利な現憲法を制定し、民政移管後も軍の既得権益が温存される仕組みを作った上で民主化を容認してきたと説明した。これに対し、外国人の家族を有するアウンサンスーチー氏は憲法の規定で大統領になれないものの、15年の選挙でNLDが与党となると、憲法の規定を利用して、大統領にも命令できる「国家顧問」を新設し、同氏を就任させて対抗してきたと解説した。昨年11月の総選挙で、憲法改正への意欲を見せていたNLDが圧勝すると、国軍は権威の失墜を恐れ、暴力的な手段でクーデターを起こしたと話した。今後、国軍はNLDの政治権力をはく奪し、軍寄りの政権をつくることが予想されると述べ、再び軍政に戻ることに懸念を示した。

一方、国軍のクーデターに対して各地で発生している市民のデモや不服従運動は、組織やリーダーが主導するものではなく、一人ひとりの意思による自発的な行動と説明。NLDは市民の支持を受けてインターネットを利用して臨時政府「ミャンマー連邦議会代表委員会」(CRPH)を結成し、国際社会に窮状を訴え、国軍に対抗していると語った。

その上で根本氏は、日本政府に向けて、国軍による暴力行為を非難する声明の発出と国軍への説得の継続、人道援助を除いた新規の政府開発援助(ODA)の停止などを提言。また、市民による草の根レベルの活動として、SNSによる情報発信、クラウドファンディングを通じた同国民への生活支援、在日ミャンマー人との交流や協働、諸宗教協力による平和と人権保護に向けた祈り、連帯活動を提案した。

この後、根本氏に加え、逢沢氏、杉野氏、在日ミャンマー人の女性によるパネルディスカッションが行われた。ACRPの根本信博事務総長が進行役を務めた。

在日ミャンマー人の女性は、軍政に抗議する市民の思いを証言。国軍の発砲で子供たちまでも犠牲になっている惨状を訴え、支援を求めた。

逢沢氏は、人道・人権問題に対しての非難は「内政干渉」にあたらないと述べ、国際社会が一丸となって国軍に圧力をかけていく重要性を強調。杉野氏は、同国の和解に向けてWCRP/RfPミャンマー委員会の指導者と取り組んできたことに触れ、「ミャンマーの人々の悲痛な叫びを無視した妥協や迎合に陥らないことを確保した上で、あらゆる諸宗教外交、対話の機会を模索していきたい」と語った。