大聖堂で降誕会 「み仏のご出生の目的」をかみしめ 庭野会長が法話 (動画あり)

法話に立った庭野会長は、自らが仏に生かされていることを実感し、平和な心を持つ大切さを説いた

約2500年前、ルンビニーの園で生まれた釈尊。その生誕(降誕)を祝うとともに、仏教徒として教えに出遇(であ)えた悦(よろこ)びといのちの尊さをかみしめて、さらなる布教伝道を誓願する立正佼成会の「降誕会」が8日、東京・杉並区の大聖堂で厳修された。降誕会は、季節の花で飾った花御堂に誕生仏を安置し、甘茶を灌(そそ)いで供養することから「灌仏会(かんぶつえ)」ともいわれる。当日は聖壇上に花御堂が設けられた。式典には感染防止のため会員は参集せず、その模様がインターネットの動画共有サイトを通してライブ配信(会員限定)された。

式典では、庭野光祥次代会長を導師に読経供養が行われた。この中で、光祥次代会長が庭野日鑛会長の啓白文(別掲)を奏上し、灌仏した。

降誕会の様子(クリックして動画再生)

啓白文で庭野会長は、「み仏のご出生の目的は唯一(ただひと)つ、衆生(しゅじょう)に仏の智慧を成就させること」と表し、「それは私たちが真理に目覚めることであり、悩み苦しむ人々が仏さまの教えによって救われるようにと願い、大乗菩薩道にまい進すること」と示して、さらなる精進を神仏に誓願した。

仏讃歌「この光あるところ」の斉唱に続き、和田惠久巳総務部副部長(国際宗教協力専任部長)が体験説法に立った。

和田副部長は、中学生の時に国際交流に関わる仕事を志し、大学でアラビア語を専攻するとともに、学林予科(現・学林光澍)で寮生活を送りながら仏教を学んだ体験を振り返った。法華経の講義では、「相手は変えられない。変えられるのは自分だけ」との教えを胸に刻んだと語った。

また、大学卒業後に留学したエジプトで強盗に襲われた際、「あなたはムスリム(イスラーム教徒)なんでしょ。どうしてこんなことをするの」と話しかけると、強盗が謝り去っていったことを紹介。ムスリムの友人が涙を流し寄り添ってくれたことを含め、この出来事から、人にとって信仰の大切さを実感し、諸宗教対話に尽くしたいとの願いを強くしたと述懐した。

本部に入職後は国際交流や諸宗教対話に携わってきたことを報告した。この中で、数年前、テロについての国際会議で光祥次代会長のスピーチを聞き、宗教を利用し暴力を振るうテロリストを「自分とは違う」と非難しているだけの自身の姿に気づいた体験を発表。スピーチで示されたように、誰もがテロリストになる可能性がある不条理な世界の現実を「自分事」と受けとめ、解決に尽力することを誓願した。

この後、庭野会長が登壇。誕生仏に甘茶を灌ぎ、法話を述べた。

聖壇上に設けられた花御堂で灌仏する庭野会長

この中で庭野会長は、花が咲き、しぼむという自然現象は当たり前のように見えて、実は神秘的なことであると説明。コロナ禍による自粛生活にあっても大自然の花などを愛(め)で、日々感動、感激を持って生きる大切さを強調した。加えて、大きな声を出すことが健康につながるとし、感動した文章を音読して身心を調(ととの)えることを勧めた。

また、宇宙飛行士のラッセル・シュワイカート氏が残した「宇宙空間から眺めると、地球は美しいだけでなく、『生きている』と感じられた。そして自分の生命は、地球と繋(つな)がっていると感じた。地球に生かされていると思った。それは言葉では言い尽くせないほどの感動的な一瞬だった」という言葉を紹介。地球に生かされているとは、「仏さまに生かされている」と同じ意味であると述べ、「人類は運命共同体であり、一つの『宇宙船地球号』に乗っている同士ですから、平和な心を持って、争うことのない世界を目指すことが大切です」と説いた。

その上で、『経典』(青経巻)の「普回向」には、仏の教えを自分が悟るだけでなく、全ての衆生と共に成仏していきたいとの願いが込められていると説示。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という宮沢賢治の言葉に通じるものであり、「そうした心で、世界の平和に貢献していきたいものです」と述べた。

降誕会

釈尊の生誕を祝う法会のことで、釈尊の遺徳を偲(しの)ぶ「涅槃会(ねはんえ)」、釈尊が悟りを開いた意義をかみしめる「成道会」とともに仏教三大行事の一つ。釈尊は紀元前5世紀頃、カピラヴァストゥ(釈迦国、現・ネパール領)のルンビニーで生まれた。誕生した時、天人が香華を舞い散らせ、竜が清らかな水を降らせて産湯としたという仏伝に基づき、降誕会では、季節の花で飾った「花御堂」に誕生仏を安置し、参拝者が甘茶を灌いで供養する。仏教徒にとって、尊い教え、かけがえのないいのちを頂いた有り難さをかみしめる日。

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