COP26事前会議 『信仰と科学』テーマにオンラインで開催 光祥次代会長がスピーチ
今年11月に英国で行われる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向け、世界の諸宗教者や科学者による事前会議が2月25日にオンラインで開催された。テーマは『信仰と科学――COP26に向けて』。立正佼成会の庭野光祥次代会長が参加し、宗教指導者の一人として英語でスピーチした。この会議は、英国政府、イタリア政府、バチカン教皇庁の共催によるもので、全7回の開催を予定。2月4日に第1回が行われ、今回が2回目となる。
世界の平均気温は今も上昇し続けている。原因は人間が排出する温室効果ガスで、地球温暖化が続けば海面上昇や異常気象を招き、世界各地に深刻な影響を及ぼすとされる。このため、2015年に採択されたパリ協定では、「気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満、できれば1.5度に抑えること」を目標にし、各国に温室効果ガスの排出削減を求めている。
25日に行われた事前会議のスピーチで光祥次代会長は、京都市の龍安寺(臨済宗妙心寺派)のつくばいに刻まれた「吾唯足知(われただ足るを知る)」の精神や「足ることを知る人は心穏やかであり、足ることを知らない人の心はいつも乱れている」という釈尊の言葉を解説。多くの物を持ちながら「満足」できずにいる人間の心が環境問題を引き起こしているとし、気候変動を解決するには、一人ひとりが「足るを知る」の精神を自覚し、生活を変えていくことが大切と訴えた。
さらに、気候変動や環境問題の解決は数十年、数百年単位で考え、行動すべきものであり、それぞれが自らの生活を見つめ直し、「どれだけできていないか」を知るところから始めなければならないと述べた。その上で、貧困や格差、環境などの17分野で2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」にちなみ、本会の青年部員たちが「My SDGs」として、地域のごみ拾いやプラスチックで包装された菓子を買わないようにしていることなどを紹介した。
この中で、ある青年が動画共有サイト「YouTube」でストローが鼻に刺さったウミガメの動画を見たのを機に、ペットボトルの利用をやめ、ごみへの意識を高めた経緯を説明。「これがあったら便利」といって買い物をしていたが、「これがなくても生きていける」という意識に変わり、自らの行動を変えている青年の姿を伝えた。
最後に光祥次代会長は、「すべては自然から与えられているものばかりです。大いなるものから自分は生かされている、それは何のためか、といった問いのないところに、正しい信仰は絶対に生まれてきません」という庭野日敬開祖の言葉を引用。全てのいのちがつながり合っていること、その全ての存在の営みによって、それぞれのいのちが生かされている事実を認識していくことが必要と語り、スピーチを結んだ。
その後のディスカッションでは、光祥次代会長のスピーチに対し、いくつもの感想が寄せられた。ある女性識者は、「必要のないものは買わないといった一人ひとりの行動変容が大事であると強く感じた」と話した。
パリ協定
2020年以降の温室効果ガスの排出削減などを定めた新たな国際的なルール。2015年12月、フランス・パリで開催された第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された。長期目標として、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満に設定し、1.5度に抑える努力を求めている。2度未満に抑えるには、今世紀後半に温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることが必要で、努力目標の1.5度に抑えるには、2050年までに「脱炭素化」しなければならないといわれている。