パレスチナ自治区ガザで起業家支援 日本の民間団体や大学生らの協力で

基調講演に立ったNHK解説委員の出川展恒氏は、イスラエルとパレスチナの現状を解説した

パレスチナ自治区ガザで起業支援――その取り組みの報告会が3月10日、参議院議員会館で行われた。日本の民間団体や国連機関、大学生、研究機関のメンバーで構成されるガザビジ!(Japan Gaza Innovation Challenge)と、一橋大学イノベーション研究センター(IIR)が主催した。

主催団体の「ガザビジ!」は毎夏、ガザで社会問題を解決するビジネスアイデア(新規事業案)を募り、起業コンテストを実施している。現地の人々が生活で困っている課題の解決を目指し、起業する若者の支援が目的。今回は、昨年実施された起業コンテストの優勝者、準優勝者の2人を日本に招へいした。報告会には国会議員、国連機関の関係者らが参加した。

報告会では、『ガザ地区の現状とパレスチナ問題の今後』をテーマにNHK解説委員の出川展恒氏が基調講演に立った。出川氏は中東和平の実現に向け、国際社会はイスラエルとパレスチナの「2国家共存」を支持し、米国の歴代大統領も同様の立場であったことを紹介。これに対し、2月にホワイトハウスで行われた米国のトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相による初の首脳会談で、トランプ大統領が「2国家共存にこだわらない」と発言し、国際社会から懸念の声が上がっていると指摘した。

一方、その会談でトランプ大統領はイスラエルが進めるヨルダン川西岸での入植を「少々控えてほしい」と自制を求めたことにも触れ、「入植地が拡大すれば、パレスチナの領土が削られ、土地の連続性が失われることでガザ地区を含めたパレスチナ国家の樹立が不可能になる」と説明した。

さらに、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸とガザの両地区は飛び地状態で、統治においても長年分裂したままになっているとの現状を解説。「『2国家共存』以外に解決策はないと認識することが大切。そしてイスラエルに対して、占領地での入植活動をやめるよう繰り返し求め、ガザ地区の封鎖を解除するとともに、特に若者たちの絶望感が広がることを避けるべく、住民の医療・教育・人材育成に力を入れて支援を行うことが重要」と話し、日本が果たすべき役割もその点にあるとの見解を示した。

この後、昨年の起業コンテストで優勝したマジド・マシュハラウィさん(23)と、準優勝のアマル・アブ・モエリックさん(25)が登壇。マシュハラウィさんは、度重なる戦闘で荒廃したガザを復興しようと、焼却灰を使ったセメントブロックを開発する会社を興した。モエリックさんは、イスラエルとパレスチナの対立で障害を負った人が多い現状に焦点を当て、電力供給が不安定な中でも重い荷物を階段で運べる機材を開発。2人は起業のアイデアや事業内容を発表した。

起業コンテスト優勝者のマシュハラウィさん

準優勝者のモエリックさん