WCRP日本委員会「新春学習会」 『Withコロナを生きぬく慈しみの実践』テーマに

パネルディスカッションでは、吉水氏(中央左)と雨宮氏(左下)が、コロナ禍での支援活動を報告した(「Zoom」の画面から)

『Withコロナを生きぬく慈しみの実践』をテーマに、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の「新春学習会」が1月25日、オンラインで開催された。同委員会加盟教団の宗教者や賛助会員など約200人が視聴。立正佼成会から同委員会理事の國富敬二理事長が参加した。

学習会では、植松誠理事長(日本聖公会主教)の開会挨拶に続き、共同通信編集委員・論説委員の太田昌克氏、NPO法人「ほうぼく-抱樸」理事長の奥田知志氏(日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会牧師)が基調発題を行った。

この中で太田氏は、核兵器禁止条約が1月22日に発効したことを踏まえ、「核なき世界」に向けた国内外の諸情勢について解説。日米関係は現実的に「核の同盟」であるとの認識を示し、米国の「核の傘」のもと、その抑止力に依存する日本の政策を説明した。日本が同条約に不参加の立場を取るのは、米国への配慮が一因であるとも述べた。

日米の核戦略について説明する太田氏

また、米国の核戦略に言及。トランプ政権はロシア(旧ソ連)との中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄し、核兵器の近代化を進め、小型核を実戦配備した一方、バイデン新政権は、オバマ元大統領の核戦略路線を踏襲し、核兵器の目的を抑止力のみに限定する「核の先制不使用」の方針を取るとの見通しを示した。

その上で、米国による「核の傘」への過剰な依存は、戦争被爆国としての日本のアイデンティティーと道徳的権威を失わせると指摘。世界の核秩序の再構築に向け、日本政府に対して、広島、長崎の被爆体験という「原点」への回帰と、核兵器禁止条約加盟に向けた政治的コミットメント(確約)を求めた。

次に奥田氏は、新型コロナウイルスの影響とみられる自殺が増えている現状を説明。自殺防止は専門家だけでなく、誰もができる取り組みであるとして、身近な人の心身の変化に気づき、相手の悩みに耳を傾け、必要であれば専門機関につなぎ、その後も見守り続けることが大事と述べ、特に宗教者にその役割があると強調した。

奥田氏はコロナ禍で増加する自殺の現状や宗教者の役割を述べた

また、対人援助には、具体的な問題解決型の支援と、相手に寄り添い続ける伴走型の支援があると説明。聖書の「インマヌエル(神われらと共にいます)」という言葉を引用し、一緒にいることが相手の救いになるというキリスト教の救済論を示しながら、そうした触れ合いが自殺防止にもつながると語った。

さらに、同ウイルスの流行を通して、人は一人では生きていけないとの思いを強くするとともに、いのちほど大事なものはないと再認識したと述懐。宗教者として宗教の本質を見つめ直し、「いのち優先」の社会を目指していきたいと述べた。

続いて、山崎龍明・同委員会平和研究所所長を進行役にパネルディスカッションが行われた。吉水慈豊・日越ともいき支援会代表、雨宮春子・日本キリスト教海外医療協力会タンザニア派遣ワーカーが、宗教的精神を基盤にしたコロナ禍での就労支援、物資支援、医療支援などの活動を報告。この後、奥田氏を加えて、質疑応答が行われた。