庭野平和財団オンラインシンポジウム 『共同体と信仰』をテーマに

庭野平和財団によるシンポジウム。内山氏(右下)が基調講演を行った(「Zoom」の画面)

『共同体と信仰』をテーマにした庭野平和財団主催のシンポジウムが11月5日、オンラインで開催され、45人が視聴した。

哲学者で森づくりフォーラム代表理事の内山節氏が基調講演を行った。内山氏は、「宗教」「信仰」という言葉は、明治時代に西洋から日本に新たに入ってきた概念を翻訳したものと説明。「日本古来の信仰」は、故人の冥福や死後の往生、五穀豊穣(ほうじょう)、村の無事、子の成長など、生活と密着した祈りや願いを出発点としており、共同体が人々のそうした思いを共有する社会として機能していたと語った。

また、日本人は、自らの家系の祖先だけでなく、地域社会や所属する共同体の基盤をつくってきた先達を含めて「先祖」と考え、その供養を行って故人との関係を大切にしてきたことや、明治時代前までの神仏習合などを挙げて、日本人の伝統的な観念や精神性を解説。「人々は自分たちの生きる世界に根差した祈りを捧げ、それを共有しながら日本的な信仰をつくった」と話した。

一方、近年の日本人の宗教的意識に触れ、教団への帰属意識が薄れる傾向にある半面、特定の宗教を信じていなくても、自然に宿る神秘的な力に畏敬の念を抱くといった自然信仰的な感情を持つ人が増えている現状を報告。宗教的意識調査などでは「信仰心」は薄れているとされるが、内山氏はむしろ高まっているとも言えると指摘した。その背景には、年々、孤立化が進む社会の現状に疑問を持つ人が増えているからで、「(自然や死者を含め)関係をもう一度つくり直そう」とする時代を迎えていると述べた。

続いて、修験道体験者の弓削田(ゆげた)彰子氏、岩手・盛岡市にある真宗大谷派寺院・専立寺の日野岳(ひのおか)史乗住職が、自然や地域とつながりを大切にする生き方を紹介。弓削田氏は、修験道を通して自然との一体感を味わうことで心身が健康になれると述べた。日野岳住職は、同寺で神社の直会(なおらい)やクリスマスコンサートを行うほか、自身も神輿(みこし)の担ぎ手にもなるとの日常に触れ、それぞれの信仰心を尊びながら住民と共に地域を支える様子を報告した。この後、質疑応答が行われた。