大聖堂で「朔日参り(布薩の日)」のご供養 光祥次代会長あいさつ

大聖堂聖壇であいさつする光祥次代会長

8月1日、大聖堂(東京・杉並区)の聖壇で「朔日(ついたち)参り(布薩=ふさつ=の日)」のご供養が行われ、その様子が動画共有サイトを使って配信(立正佼成会会員限定)された。読経供養の後、導師をつとめた庭野光祥次代会長が全国の会員に向けてあいさつした。その要旨を紹介する。

今、法華経を実践する時

その方(Aさん)は毎日熱心に教会に通われていました。ある時、お父様に多額の借金があることが分かりました。4人きょうだいの長女だったAさんには「何でこんなになるまで言ってくれなかったのだろう」と責める気持ちもありましたが、多額の保険をかけていたため、お父様が自殺するのではないかと心配でもあり、きょうだいでお父様に自己破産をするようにお話ししたそうです。けれど、お父様は首を縦に振りません。

「どうしたら自己破産してくれるだろうか。自分はどうしたらいいのだろうか」と法座でオロオロと取り乱しながらお話しされたそうです。その時、法座主を務めていた本部の講師さんがこう聞きました。「あなたはこれまで、毎日教会に来ていたそうですが、教会に来て何をしていたんですか。こういう時にオロオロしないで、腹を決められるためなんじゃないですか」。

Aさんは我に返り、よく考えてみたそうです。毎日教会に通ってお役をしているだけで、何か修行をしている気持ちになっていたけれど、自分は何のために教会へ通っていたのか。教会で何を学び、何を身につけ、どんな生き方ができるようになったのか。それは、自分の人生に何をもたらしたのだろうか。

家に帰り、教会で学んだこと、ご自身が教務員として日ごろ説いていたことを反芻(はんすう)してみました。少しずつ心が落ち着き、その心でお父様の気持ちを聞くことができたそうです。するとお父様は、なぜ自己破産をしないのかを話してくれました。自己破産をすると、事業を継いでくれている息子、つまりAさんの弟さんに悪影響が出てしまうためとのことでした。

いくつになっても子供のためを思う親心に打たれたAさんは、きょうだいで話し合いをしたそうです。その結果を次の月の法座で同じ講師さんにご報告されました。それはこんなお話でした。

お父様の借金はそれぞれの配偶者にも理解してもらい、きょうだいで返済していくこと。それはお父様の借金の肩代わりをして返済をするという意識ではなく、愛情をかけて何不自由なく育ててくれたお父様へ、毎月感謝のプレゼントをする気持ちで払っていこうと決めたとのことでした。

そこで弁護士さんに整理をしてもらうと、8500万円ほどあった借金が、実際には3000万円ほどの返済で済むことが分かり、その後10年も経たないうちに完済できたそうです。

私たちはつい、8500万円もあった借金が3000万円で済んだことに目がいき、それがお計らいのように思ってしまうのですが、実はここで大切なのは、オロオロしない心境になれたこと。落ち着いて現状を見て、なぜそうなってしまったのかの経緯、つまり、因縁を理解することができたこと。そして同じ信仰を持つきょうだいが、それを「お父様へのプレゼント」として感謝で、喜んで払おうと思えたこと。この見方の転換が、毎日教会へ通われていた功徳、ご法を学ばれた功徳なのだと思います。

自分の人生に、また出会った人の人生に豊かな価値をもたらすための稽古場、それが教会です。教会以外で発揮できなければ、何の意味があるでしょう。

(新型コロナウイルスの影響で)教会が閉鎖された今だからこそ、教会で学んだこと、身につけたことを発揮する場があるはずです。教会が閉鎖しようが、感染が拡大しようが、人間の因縁は動き続け、待ってはくれません。実際に会うことができる人は限られていますが、困っている方は必ずいるはずです。今こそ、因果の理法を知り、法華経を学んだ私たちの実践の時ではないかと思います。