アヤソフィアは世界が分かち合うべき遺産――WCRP/RfP国際委(海外通信・バチカン支局)
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会は7月24日、トルコ・イスタンブールにある歴史的建造物「アヤソフィア」を、これまでの博物館からモスク(イスラーム礼拝所)に変更し、イスラーム化することに反対する声明文を公表した。世界教会協議会(WCC)のプレスリリースも同日に伝えた。
アヤソフィア(ギリシャ語では「ハギアソフィア」)は、6世紀に建てられたキリスト教の大聖堂を起源とし、15世紀にイスラームのモスクとなり、トルコ共和国成立後は博物館として利用されてきた。そうした歴史から、諸文明、諸宗教間の対立と対話、調和を表す「異文化共存」のシンボルとして知られる。内部には、創造主としてのキリストのモザイク、預言者ムハンマドの名を刻んだ円盤などを有し、外部は四方を4本のミナレット(イスラームの尖塔=せんとう)によって囲まれている。1985年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界遺産」に登録された。
しかし、トルコ国家評議会(最高行政裁判所)は7月10日、アヤソフィアを博物館とする1934年の閣議決定を撤回。エルドアン大統領は、直ちにアヤソフィアをモスクとする大統領令に署名した。同24日、86年ぶりにイスラームの金曜礼拝が執り行われたが、同大統領の決断はキリスト教諸教会や欧米の世論のみならず、イスラーム共同体からも強い批判を受けている。
WCRP/RfP国際委は声明文の中で、世界遺産であるアヤソフィアは平和と全ての信仰に対する尊敬をもたらす普遍的な価値を有しており、一部の人々の利益のために信仰を利用することがあってはならないと強調。同大統領の判断は宗教的感情や制度を政治利用して分断を生み、諸宗教者同士を対立させるものと懸念を示した。
さらに、多くの地域で発生している分断や対立に対し、「私たちは、平和、共存の側に立つ」との立場を表明。信仰、人種、性、民族、レッテル、制度、国家の違いを超えて、全ての人々と調和する大切さを示し、「この共有された歴史の一場面において、(アヤソフィアが)慈悲、愛、思いやりを表現し、また国家権力が憎しみ、恐怖、不安を拡散するためではなく、慈悲と他者への尊重のために使われるように願う」と訴えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)