新型コロナウイルスの終息を祈ったローマ教皇フランシスコとWCRP/RfP(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは5月14日、バチカンにある居所「聖マルタの家」で開いた朝のミサで、「人類のための祈り、断食、嘆願の日」のために祈りを捧げた。

同14日を「祈り、断食、嘆願の日」とする取り組みは、「人類の友愛高等委員会」が新型コロナウイルスの世界的な流行の早期終息を願い、世界に向けて提案したもの。同委員会は、昨年2月に教皇とイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長が署名した「人類の友愛に関する文書」の精神を世界に広く伝えるため、昨年9月に創設された。バチカン諸宗教対話評議会議長のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット枢機卿が委員長を務める。

ミサの中で教皇は、「人類の友愛高等委員会の呼び掛けに応え、私たち一人ひとりが祈り、共同体が祈り、諸宗教が祈る。神に祈るのだ。この苦痛と悲劇の期間に、友愛によって結束された皆が兄弟として祈るのだ」と説教。多くの人の命を奪った同ウイルスから「私は免れた。神に感謝する」と言う人がいることについて触れ、あるべき姿として、「他の人々のことを考えよ。新型コロナウイルスがもたらした悲劇、経済や教育への影響、そして、その後に来る世界についても考えよ」と戒めた。

また教皇は、諸宗教が共に祈ることは相対主義(諸教混交)であるとの非難に対し、「私たちは、全ての人の父である神に祈っているのだ。同じ人間として、同じ兄弟として、それぞれの文化、伝統、信仰に沿いながら祈っている。このことが重要なのだ」と答えた。

さらに世界では、この感染症だけでなく、さまざまな“伝染病”により多くの人が命を落とし、苦しんでいるにもかかわらず、「私たちは気づかず、見ないふりをしている」と指摘。「この4カ月間で、飢餓という病により約400万人が亡くなった」「戦争や子供たちの教育機会の喪失といった病も世界中で起きている」と説明し、「神が私たちを哀れみの目で見てくださっており、こうした非常に無残な状況を終息させてくださるように祈ろう」と呼び掛けた。

バチカンの公式ウェブサイト「バチカンニュース」は14日、『世界的なパンデミックの中で互いに支え育み合おう――世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)からの呼び掛け』と題した記事を掲載した。WCRP/RfP国際委員会が人類の友愛高等委員会の提案に賛同し、「全世界の人々に、自身の信仰の伝統を尊重しながら生命尊重のメッセージを発しよう。そして、弱い人々を助けながら、(同ウイルスがもたらした)傷痕や差別に対し、霊的、心理的なサポートをなし、子供、老人、難民といった弱い立場の人々、困難や恐怖に陥っている人々を支援するように」とのメッセージを発表したと伝えた。

加えて、WCRP/RfPイタリア委員会で副委員長を務めるランカ・エカート・コーエン師(ユダヤ教指導者)のインタビュー記事と音声をウェブアップした。この中で同師は、新型コロナウイルスが私たちの生活を大きく変質させると述べ、「外出禁止令が解かれてすぐ、路上で母親に連れられた女の子に出会った。私は、彼女に向かってほほ笑んだが、マスクを着けていない彼女は、慌てて逃げていった」というエピソードを紹介。「両親から、見知らぬ人と会ったら逃げるよう言われているのだろうが、私にとってはつらい体験だった」と語った。その理由として同師は、「戦時中に私は、敵(ユダヤ人を大量虐殺したナチス)から逃げなければならなかったから」と自らの体験を挙げ、同ウイルスによって人間同士の信頼関係が失われ、対人恐怖症や差別が広がらないように祈ると述べている。